ストリートファッションとラグジュアリーブランドの融合が叫ばれて久しい昨今、街を見渡すと老いも若きもストリートファッションをコーディネートに取り入れています。
しかし、簡単そうに見えて意外と難しいのがストリートファッション。
スニーカーは革靴と比べるとどうしてもカジュアル色が強いアイテムです。
ダボっと着れるオーバーサイズなアイテムやストリートファッション特有のビビッドな色使いは一歩間違えると子供っぽさに直結します。
しかし、こうしたストリート系アイテムを避けてコーデを組むと、WEARのランキング上位に居るような大学生ファッションになりがちなのも悩みどころ。
※大学生ファッションの例
出典:wear
今回の記事では、大人ストリートスタイルを目指すあなたに向けて、現在のストリートファッションの歴史やコーディネートへの取り入れ方、また、そもそもどんなブランドを狙えば良いかなどを解説いたします。
ぜひ、本記事を参考にストリートファッションへの苦手意識を払拭していただければと思います。
■現在のストリートファッションのトレンド -スニーカー-
この記事を書いている2022年現在のストリートファッションのトレンドでいえば、スニーカーブーム終焉の兆しが見え始めているのが大きいと言えるでしょう。
2014年の「アディダス スタンスミス」や「リーボック インスタポンプフューリー」の復刻以降、各社が1990年代に一世を風靡したスニーカーたちを次々と復刻し、様々なブランドとのコラボレーションスニーカーを皆がこぞって買い求めていました。
また、バレンシアガをはじめとする歴史あるブランドがこぞってダッドシューズと呼ばれるスニーカーをリリースしたことも、スニーカーブームに拍車をかけました。
※バレンシアガ トリプルS
出典:hypebeast
しかし、少しずつではあるものの、直近ではそんなスニーカーブームが落ち着きを見せ始めています。
ナイキを例に挙げるならば、ブームに乗ってこれまでエアマックス、エアフォース1、エアジョーダンと、歴史あるスニーカーを数多く復刻/新色リリースをしてきたなか、現在ナイキはダンクに大きく力を注いでいます。
しかし、大手スニーカーショップのatmosの本明代表がインタビューで述べているように、ナイキにはダンク以降の名作モデルの持ち駒がなく、ダンクブームの終了=ナイキが牽引するスニーカーブームが終了するのではないかと懸念されています。
※本明氏のインタビュー記事(別サイトに飛びます)
https://www.fashionsnap.com/article/2021-02-09/sneakerboom-amos/
もちろん、過去にデッキシューズがその道を辿ったように、スニーカーブームの終焉が、すなわちスニーカー=ダサいという価値観に繋がるとは言えないでしょう。
スニーカーを街で履くというスタイルは一過性のトレンドでは終わらないほどに世間に広がりましたし、むしろ、今後はトレンドに左右されない「定番アイテム」として人々の足元を飾ってゆくのではないかと考えられています。
こうした経緯も踏まえると、今後はストリートスタイルがすなわちスニーカースタイルと直結するということは無くなるかもしれません。
■現在のストリートファッションのトレンド -コーディネート-
これまで、ストリートファッションとして人々の頭に浮かんでいたスタイルは、今後あまり街で見かけられなくなる可能性が高いでしょう。
現在のストリートファッションブランドの様子を見ていると、以前は多くのブランドが打ち出していたブランドロゴを全面に押し出したスタイルが少しずつ減り始め、柄物の活用や、ミリタリーテイストなどを取り入れたアイテムが増え始めているように感じます。
また、いわゆるこれまでのストリートスタイルと呼ばれるような、オーバーサイズ気味のパーカーやTシャツにスウェットパンツやスキニー、そしてスニーカーを合わせるようなコーディネートは街から姿を消し、ストリート系のアイテムをどこかワンポイントに使いつつも、全体としては品よくまとめたようなコーディネートが増え始めている様が見受けられます。
※これまでのゴリゴリのストリートファッションスタイル
出典:pinterest
※今のストリートスタイル
出典:rebloggy
つまり、今後のストリート系アイテムとの付き合い方は他のアイテムとのバランスが重要。
スニーカーを履くならスラックスと合わせたり、スウェットを着る際は中にシャツを入れたりといったバランス感が大切になることは間違いありません。
■ストリートファッションとラグジュアリーファッション
ここまでで解説してきた今のストリートファッションの着こなし方は、実は数年前から様々な高級ブランドで提案されてきたスタイルです。
ラグジュアリーとストリートの融合といえば、バレンシアガのロゴ入りのキャップやスニーカー、そしてグッチの派手派手しいアイテムなどが頭に浮かぶ方も少なくないでしょう。
しかし、数十年、場合によっては100年以上ものあいだ堅実な服作りを行ってきたブランドたちがストリートに目を向けているのは、品よくまとまったシックなコーディネートの「外しアイテム」としての提案なのではないかと筆者は考えています。
こうした提案を無視してグッチのスウェットにスキニーデニムやハイテクスニーカーを安易に合わせてしまうと、新宿や渋谷のキャッチのようにギラギラしているのに子供っぽいアンバランスなコーディネートになってしまうことは間違いありません。
※参考 キャッチのようなコーディネート
出典:shop17
これからのストリートファッションを考えるうえでは、ファッショントレンドを牽引するラグジュアリーブランドがなぜ今ストリートに目を向けているかを知ることが非常に大切です。
なお、ラグジュアリーとストリートの融合と、その立役者についてはこちらの記事で紹介しております。
ぜひ本記事と合わせてご覧ください。
■これからのストリートファッションにおすすめなブランド10選
ここからは、大人っぽいストリートスタイルを作る上でオススメしたいブランドをご紹介致します。
もちろん、ここまで語ってきたように、同ブランドのアイテムを着用する際は、ドレススタイルやシックなコーディネートに1アイテムだけ差し込んだり、シャツやスラックスといった元々ストリートとはジャンルの違うアイテムを購入すると良いでしょう。
【大人向け】高級感溢れるストリートファッションブランド①:オフホワイト
2014年の登場以来、ラグジュアリーストリートの雄として常に人気トップを走り続けてきたのがオフホワイト(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)です。
2021年暮れに急逝したデザイナーのヴァージル・アブローはルイヴィトンのメンズアーティスティックディレクターも手がけ、世界のトップメゾンのエッセンスも加わりますます注目を集めているブランドです。
近年ではオフホワイトの象徴とも言えるキャッチーなアローロゴをリニューアルし、ストリート感をできるだけ薄めている努力が見て取れます。
※過去のアローロゴ
出典:revolveclothing
※現在のアローロゴ
出典:ssense
なお、オフホワイトの詳細については下記の記事で詳しく解説しております。
【大人向け】高級感溢れるストリートファッションブランド②:バレンシアガ
今ではストリートファッションとしてのイメージが強いバレンシアガですが、そのイメージは2010年代に形作られたことはあまり知られていません。
2015年にバレンシアガのデザイナーに就任したデムナ・ヴァザリアは、1918年創業の老舗ブランドであるバレンシアガの当時のスタイルに敬意を表しつつも、ストリート感溢れるキャップやスニーカー、ロゴの刷新などを次々と提案し、これまでターゲットとみなされていなかった若いストリートキッズを虜にしました。
近年のバレンシアガはストリートから少しずつ本来のモードスタイルに回帰し、シャツやニット、スラックスといったアイテムを堅実なもの作りと共に数多くリリースしています。
【大人向け】高級感溢れるストリートファッションブランド③:ジバンシィ
2005年から2017年まで、名門ブランド「ジバンシィ」を手がけたデザイナー、リカルド・ティッシこそが、ラグジュアリーブランドとストリートブランドの融合の立役者だと言っても過言ではないでしょう。
ストリート特有のグラフィックデザインやレイヤードスタイルをラグジュアリーブランドに持ち込んだリカルドのスタイルには他のラグジュアリーブランドの多くも追随し、グッチやバレンシアガ、ディオールといった高級ブランドの現在のスタイルは彼の手がけたジバンシィから多大なる影響を受けています。
2020年よりマシュー・ウィリアムズがジバンシィを担当していますが、彼もまたストリートに造詣の深いデザイナー。高級感溢れるストリートアイテムを入手したい方は要チェックのブランドです。
【大人向け】高級感溢れるストリートファッションブランド④:リックオウエンス
トレンドに左右されず、ストリートともモードとも言える独特の世界観を演出しているブランドといえば、リックオウエンスが挙げられるでしょう。
黒を基調とし、バイカーファッションやメタル音楽にインスパイアされたアイテムを数多くリリースしているリックオウエンスは、まさに唯一無二のブランド。
「アルチザン」とも呼ばれる硬派なモノづくりは、10年前のカーゴパンツが現在とほとんどシルエットが変わらないにも関わらず、少しも古臭い印象を与えない堅実な物作りからも見て取れます。
その素材とシルエットはまさに一生もの。
ぜひリックオウエンスのアイテムはワードローブに1つは入れておきたいものです。
【大人向け】高級感溢れるストリートファッションブランド⑤:OAMC
大人ストリートを考えるならば絶対に外せないブランドといえばOAMC。
デザイナーであるルーク・メイヤーは過去にシュプリームのヘッドデザイナーを長年勤め上げ、現在は妻であるルーシー・メイヤーと共にあのジル・サンダーのクリエイティブディレクターを勤め上げる人物です。
そんな彼の手がけるオリジナルブランド、OAMCはまさにストリートとラグジュアリーの現在の到達点。
子供っぽさを感じさせないグラフィックと極上の素材感、そして洗練されたシルエットをぜひ一度袖を通して体感していただければと思います。
【大人向け】高級感溢れるストリートファッションブランド⑥:WTAPS
日本発のストリートブランドとして年々その存在感を増しているのがWTAPS(ダブルタップス)。
裏原宿文化全盛期に生まれたこのブランドはストリートやスケーターの文脈を残しつつミリタリーアイテムにフォーカスしたブランドとなっています。
ミリタリー特有の頑強な物作りとシックな色味のアイテムはまさに大人向け。
週1-2回のアイテムドロップが争奪戦となる様はさしずめ日本版シュプリームといったところでしょうか。
【大人向け】高級感溢れるストリートファッションブランド⑦:N.HOOLYWOOD TEST PRODUCT EXCHANGE SERVICE
クリーンで使いやすいアイテムが人気を集める日本のブランド、エヌ ハリウッド(N.HOOLYWOOD)。
デザイナー尾花大輔氏はオリンピックの聖火ランナーユニフォームや無印良品のファッションラインMUJI LABOのディレクターとしても知られています。
そんなエヌハリウッドの別ライン「エヌ ハリウッド テストプロダクト エクスチェンジサービス(N.HOOLYWOOD TEST PRODUCT EXCHANGE SERVICE)」は大人っぽいストリートファッションを目指す人にピッタリ。
米軍が使っていた衣服をリプロダクトしたアイテムなどは、うまくミリタリーとストリートの文脈を綺麗めにまとめておりマストバイ。
万人にオススメできるブランドです。
【大人向け】高級感溢れるストリートファッションブランド⑧:White Mountaineering
コムデギャルソン出身のデザイナー、相澤陽介氏が手がけるホワイトマウンテニアリング (White Mountaineering)はカジュアルなアウトドアウェアが人気。
タウンユースしやすい高品質でデザインフルなアウトドアウェアの数々は体の線を拾わないストリートファッションの文脈にかなり近いアイテムです。
「デザイン・実用性・技術の3要素を全て持ち合わせたブランド」を目指すホワイトマウンテニアリングに是非袖を通してみてはいかがでしょうか。
【大人向け】高級感溢れるストリートファッションブランド⑨:ダブレット
日本のブランドとして初めてLVMHヤング ファッション デザイナー プライズを獲得し、大きな話題を集めたブランド、ダブレット(doublet)。
日本の名ブランド、ミハラヤスヒロ(MIHARA YASUHIRO)を経てパタンナーとともにダブレットを立ち上げた井野将之氏は遊び心のある不思議なアイテムを作る人物。
水をかけると乾燥したTシャツが水分を吸って着れるようになる「インスタント」Tシャツや、バナナの茎からできた糸で作ったバナナ柄のセーターなど、ダブレットのアイテムは唯一無二。
出典:wwdjapan
ストリートの文脈に寄り添ったアイテムも多いダブレットは、大人っぽいストリートを着こなすために要チェックなブランドだと言えるでしょう。
【大人向け】高級感溢れるストリートファッションブランド⑩:ダイリク
1994年生まれの若きデザイナー岡本大陸氏が手がけるダイリク(DAIRIKU)は、新進気鋭の国内ブランドとして大陸氏の同年代を中心に大きな支持を集めているブランドです。
ダイリクのブランドコンセプトは「ルーツやストーリーが感じられる服」。
様々な名作映画を中心に毎シーズンのアイテムのコンセプトを作り上げるダイリクは、袖を通すたびにそのルーツを人に語りたくなるのが特徴。
映画やコミック、音楽といったサブカルにフィーチャーしたアイテムが多いストリートファッションというジャンルに親和性が高いブランドだと言えるでしょう。
ちなみに、ダイリクの岡本大陸氏は、先に挙げたダブレットでのインターン経験を持つデザイナー。
ダブレットの遊び心あるアイテム作りはダイリクにもしっかり引き継がれています。
■さいごに
今回の記事では、ストリートファッションとの今後の向き合い方や、大人男子が着るべきストリートブランドのご紹介をして参りました。
一歩間違えると子供っぽさが全面に出てしまうストリートファッションを着こなせれば、すなわちそれはファッション上級者の仲間入り。
ファッションアーカイブ.comでは他にもストリートファッションブランドの歴史や解説記事を数多く掲載しております。
是非興味のある方は他の記事もご覧いただけましたら幸いです。