スポーツブランド界の帝王としてスニーカーやウェアを世界中に展開するナイキ(NIKE)。
ナイキは2017年頃から、それまで散発的に行っていたスニーカーとファッションブランドやアーティストらとのコラボレーションを加速させるようになりました。
裏原宿文化にルーツを持つ「コラボレーション」は、今やファッション業界の常識。
かつて裏原宿のゴッドファーザー藤原ヒロシや、彼の周りの多くのデザイナーやアーティストらが仲間内でコラボレーションやサンプリングを行っていたことを記憶しているファンは少なくないでしょう。
2014年末にリリースされた、藤原ヒロシのブランド「フラグメントデザイン」と、ナイキのエアジョーダン1のコラボモデルは発売時に店頭で2,000人を超える行列を生んだ大事件に発展。
実はエアジョーダン1にとって初めてのブランドコラボレーションだった同作の人気は、その後のナイキのブランド戦略の方向性を決定づけるものとなりました。
今回の記事ではそんなナイキと、ブランドやアーティストとのコラボレーションスニーカーを、発売モデル数別に1〜10位でランキング化。
なお、本ランキングでは同一モデルの別カラーについても、全て1カラー1種として計算。
単純にモデル数の多さで比較した際のランキングとして記載しております。
■第10位 15種類 TRAVIS SCOTT (トラヴィス・スコット)
テキサス州ヒューストン生まれのラッパー、トラヴィス・スコットは今全米で最も成功しているラッパーと言っても過言ではないでしょう。
まだ20代ながら全米の数々の音楽賞を総なめにしてきた彼の才能はファッションシーンにおいても遺憾無く発揮されました。
2017年の初コラボ以降、数々のナイキとのコラボレーションスニーカーをリリースしてきたトラヴィススコット。
それらの多くは彼のトレードカラーであるブラウンを基調としたシックなカラーリングで構成されたモデルとなっていました。
驚くべきはナイキの名作モデルを大胆に再構築する彼のセンス。
ナイキのトレードマークとも言えるスウッシュを反転させたり、採算度外視で異素材をパッチワークしたりといった今までにないデザインを行なったスニーカーたちは2010年代後半のスニーカーシーンを大いに盛り上げました。
なお、これまでにリリースされたモデルについてはこちらの記事で詳しく解説しておりますので、ぜひ本記事と合わせてご覧ください。
■第9位 20種類 Paris Saint-Germain (パリ・サンジェルマン)
メッシ、ネイマール、エンバペといった数々の名選手を有するサッカークラブ、パリ・サンジェルマン(通称PSG)。
2018年よりそんなPSGはナイキのジョーダンブランドとの協業を発表。フットボールとバスケットボールという異色のコラボレーションは大きな話題を呼びました。
PSGの本拠地であるフランス・パリではジョーダン人気が非常に高いことも要因ですが、ナイキやジョーダンにとっては世界で最も人気なスポーツであるサッカー市場で大きな影響力を持つためにも、PSGとの協業を決意したのかもしれません。
「PARIS」の「A」の文字をジョーダンのジャンプマンロゴに置き換えたこのコラボレーションは2021年現在に至るまで一定の成功を収めていると言えるでしょう。
エアジョーダンシリーズの数々の名作モデルをPSG風にアップデートしたスニーカーたちはパリっ子のみならず世界中で愛されています。
■第8位 21種類 FEAR OF GOD (フィアオブゴッド)
ジェリー・ロレンゾが2013 年に立ち上げたらブランド、フィアオブゴッド(FEAR OF GOD) 。
ストリートの流れを強く汲むブランドながら、良質な素材と洗練されたデザインはラグジュアリーブランドの域に達しており、多くのセレブリティから愛されたことで人気を集めました。
そんなフィアオブゴッドは近年ナイキと多くのコラボレーションスニーカーをリリース。
中でもエアジョーダン1にオマージュした「エアフィアオブゴッド1」は見た目もさることながらバッシュとしても一級品。
様々なカラーリングが不定期にリリースされ大きな人気を集めました。
なお、フィアオブゴッドを含む様々なハイブランドとスポーツブランドとのコラボレーションスニーカーについては、こちらの記事で詳しくご紹介をしております。
ぜひご覧ください。
■第7位 22種類 CLOT (クロット)
2003年香港生まれの老舗ブランドクロット(CLOT)は、中国の伝統的なパターンを現代の服に落とし込むのが大得意。
そのエッセンスはナイキとのコラボレーションプロダクトにおいても遺憾無く発揮されています。
中でもナイキの不朽の名作「エアフォース1」をクロット風にカスタマイズしたコラボレーションモデルはリリースのたびに即完売。
中華服のシルクを思わせるアッパーを剥がすと下から別のデザインが登場する仕様は、以降のナイキのスニーカーに多く見られる手法の一つとなりました。
今や世界トップクラスの巨大スニーカー市場となった中国。これからのクロットの活躍にも目が離せません。
■第6位 23種類 sacai(サカイ)
コムデギャルソン(COMME des GARÇONS)出身の阿部千登勢が率いるサカイ(sacai)は、今や日本を代表するトップブランドの座に上り詰めました。
そしてサカイを現在の地位まで押し上げた要因の一つに、ナイキとのコラボレーションがあることは間違いありません。
阿部千登勢は長年得意としてきたデザイニング、すなわち異素材のパッチワークや既存のモデルの再構築をナイキとのコラボレーションにおいても採用。
ダブルで取り付けたシュータンやスウッシュ、二つの名作スニーカーのデザインを一つにまとめあげる彼女のデザインセンスは世界中から賞賛を浴びました。
サカイとナイキの歴代コラボモデルについては、こちらの記事で詳しくご紹介しております。
■第5位 37種類 UNDERCOVER(アンダーカバー)
アンダーカバー(UNDERCOVER)の高橋盾といえば、日本におけるストリート・裏原宿文化を作り上げたキーパーソンの一人。
コムデギャルソン(COMME des GARÇONS)の川久保玲も認める彼の才能をナイキは放っておきませんでした。
ダンクやジョーダンのようなローテクモデルから、ヴェイパーフライのような最新鋭のハイテクモデルまで様々なナイキのスニーカーとコラボレーションを行なってきたアンダーカバー。
東京生まれ、30年を超える老舗ブランドは未だ衰えることなくストリート・スポーツシーンの最前線を走り続けています。
■第4位 40種類 COMME des GARÇONS(コムデギャルソン)
ヨウジヤマモトと並び、日本を代表するトップブランドであるコムデギャルソン(COMME des GARÇONS)。
ヨウジヤマモトがアディダスと組んだのに対し、ギャルソンは長年ナイキと共に歩み続けてきました。
伝説のデザイナー、川久保玲の手がけるコムデギャルソンのイメージといえばやはりモノトーン。
ナイキとのコラボレーションスニーカーにおいてもその多くが黒や白を基調とした高級感あふれるモデルとなっています。
■第3位 45種類 Fragment design(フラグメントデザイン)
アンダーカバー(UNDERCOVER)の高橋盾、ア・ベイシング・エイプ(A BATHING APE)のNIGOと並び、裏原宿文化を作り上げてきたのがフラグメントデザイン(Fragment design)を手がける藤原ヒロシです。
ストリートファッションのゴッドファーザーとも言える藤原ヒロシを崇拝するデザイナーは多く、ルイヴィトン(Louis Vuitton)のヴァージル・アブロー、ディオール(DIOR)のキム・ジョーンズなどはその代表格だと言えるでしょう。
そんな藤原ヒロシとナイキの関係は古く、1990年代末期から現代に至るまで、様々なコラボレーションスニーカーをリリースし続けています。
また、裏原宿文化の典型とも言えるのが「コラボレーション」。
そのため近年特にナイキとフラグメントデザインに加え、サカイやトラヴィス・スコットといった第三者を加えたトリプルコラボも多数リリース。
今後も同ブランドのアイコンである稲妻マークはストリートシーンの中心に立ち続けることでしょう。
■第2位 101種類 Supreme(シュプリーム)
ストリートファッションブランドの雄、シュプリーム(Supreme)。
1994年にニューヨークで生まれた小さなスケートボードブランドは今や世界でも有数の企業価値を持ったファッションブランドにまで成長しました。
フラグメントデザインと並び、かなり古くからナイキとのコラボレーションスニーカーをリリースしてきたシュプリーム。
コラボレーションの多くがそれまであまりスポットの当たってこなかったマイナーなモデルにフォーカスしているのがなんともシュプリームらしいポイント。
毎シーズン必ずリリースされるナイキとのコラボレーションモデルはこれからも激しい争奪戦が繰り広げられることでしょう。
■第1位 102種類 OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH(オフホワイト)
オフホワイト(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)とナイキのコラボレーションスニーカーは、間違いなく2010年代後半のスニーカーブームを作り上げた立役者だと言えるでしょう。
2013年生まれの若いブランド、それもデザイン経験の少ない黒人建築家が作り上げたこのオフホワイトは、ナイキのコラボレーションの効果もあってあっという間に世界一の人気ブランドに押し上げられました。
デザイナーであるヴァージル・アブローは瞬く間にスターダムを駆け上がり、現在はルイヴィトン(Louis Vuitton)のメンズアーティスティックディレクターも兼任しています。
そんなオフホワイトとナイキのコラボレーションモデルはThe Tenコレクションにてリリースされたコンバースのモデル2種を除いても100種を超える堂々の第一位。
それもそのはず、2021年8月には全50種にも及ぶダンク ローを限定販売にて一挙リリースし、多くのスニーカーヘッズをスマートフォンアプリ「SNKRS」に釘付けにしました。
ヴァージル・アブローのデザインのルールは、元となるモデルに最大3%の変更を加えるというもの。
その「省エネ」とも言えるデザインセンスやダンクの発売などで見られる販売戦略は間違いなく今のファッションシーンの最先端だと言えるでしょう。
■その他のコラボレーション
ここまで、ナイキのコラボレーションスニーカーをリリースされた種類順にご紹介してきましたが、惜しくもランキングから外れたブランドの中にも様々な名作モデルが溢れています。
シュプリームの原点となった伝説のセレクトショップ「ユニオン(UNION)」や、カニエ・ウェストも認める日本発のジュエリーブランド「アンブッシュ(AMBUSH)」。
韓国の国民的アイドルBIGBANGのG-DRAGONが手がける「ピースマイナスワン(peaceminusone)」などもスニーカーヘッズ垂涎のコラボモデルを次々とリリース。
群雄割拠のスニーカーシーンでも確かな存在感を発揮していると言えるでしょう。
■さいごに
今回の記事では、スニーカーブームの中心点とも言えるナイキのコラボレーションモデルについてご紹介いたしました。
本記事を執筆している2021年9月現在のトレンドは、少しずつではありますがスニーカーから革靴へとトレンドがシフトし始めています。
これまで2010年代からファッションシーンの先頭をひた走ってきたスニーカーですが、今後のトレンドの変化からファッショニスタを引き止めるにはハイプなコラボレーションモデルをリリースし続けるしかないのかもしれません。
今後のナイキや他のスニーカーブランドの動向に、当ブログでも注視をしてゆこうと思います。