1994年にニューヨークの小さなスケートボードショップから始まったシュプリーム(Supreme)。
ストリートファッションの王道ブランドとして、世界中から人気を集めるブランドとなっています。
しかしこのシュプリーム。実は世界にたった17店舗しか存在せず、セレクトショップへの卸もほとんど行っていません。
それなのにも関わらずシュプリームの資産価値は1億ドルを超え、巨大ブランドと同等かそれ以上の存在感を放っています。
では、シュプリームはなぜ人気なのでしょうか?
本記事ではシュプリームの歴史やデザイナー、そしてあまり知られていない豆知識などをどこよりもわかりやすく解説。
彼らのブランド戦略やボックスロゴを一躍有名にしたエピソードなど、シュプリームを買う前に知っておきたい情報も盛りだくさん。
この記事さえ読めば貴方がシュプリームについて詳しくなれること間違いなしです!
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目次
- ■本当はヤバいシュプリームの歴史
- ■シュプリームのボックスロゴの秘密
- ■シュプリームが仕掛けるブランド戦略
- ■シュプリームのアイテムはなぜ人気?
- ■シュプリームを手がけるデザイナー
- ■シュプリームを愛する有名人
- ■さいごに
■本当はヤバいシュプリームの歴史
・創業者ジェームズ・ジェビアとはどんな人物?
出典:hypebeast
シュプリームの創業者兼CEOはジェームス・ジェビア(James Jebbia)。
彼がシュプリーム立ち上げまでに歩んだ歴史は、まさにストリートファッションの歴史と言っても過言ではありません。
ジェビアはニューヨークのスケートショップ「パラシュート」での経験を経て、1989年にセレクトショップ「UNION NYC」を設立。
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同時期、ジェビアはストリートファッション業界の重要人物と邂逅。
その人物とは、スケーターやサーファー向けのファッションブランド「ステューシー(Stüssy)」をカリフォルニアで立ち上げ、東海岸の中心地であるニューヨークでの出店をもくろむショーン・ステューシー(Shawn Stüssy)だったのです。
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ショーンに請われ、店舗「Stüssy NYC」設立を支援したジェームズ・ジェビア。
UNION NYCやStüssy NYCを通じてニューヨークのスケーター達と交流を深めたジェビアは「自身の理想とするスケートショップ」を目指すようになります。
なお、より詳しくジェームズ・ジェビアについて知りたい方は、ぜひこちらの記事も併せてご覧ください。
・1994年にシュプリームを創業
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ジェームズ・ジェビアは1994年4月にマンハッタンのダウンタウンの一角を借りて、シュプリームをオープン。
店にはZoo YorkやShorty’s、VANSといったスケーターブランドをセレクトし、ニューヨークのスケーターたちがたむろする「溜まり場」のような雰囲気となっていたそう。
出典:gq
オープン当初のシュプリームは、現在と異なり他ブランドから卸したセレクトアイテムがメイン。
最初のオリジナルアイテムとしてリリースされたのは3種類のTシャツでした。
映画「タクシードライバー」のロバート・デニーロにフィーチャーしたもの、アフロヘアのスケーターのフォトTee、そしてシュプリームのボックスロゴがプリントされたアイテム。
それぞれ60着ずつしか作られなかったようです。
・ハイブランドとの「勝手にコラボ」が話題に
シュプリームを運営していたジェームズ・ジェビアは、あるとき店に訪れるスケーターたちが、リーバイスやカーハートといったストリートやワーク系のウェアと、グッチやルイヴィトンといった高級ブランドとをミックスして着ていることに気が付きます。
これに着想を得たジェームズ・ジェビアは、なんとコカ・コーラやグッチ、ルイヴィトン、バーバリーといった超有名ブランドのロゴやデザインとボックスロゴ掛け合わせたプロダクトを勝手に次々と発表。
当然ルイヴィトンなどからは抗議を受けることとなりますが、こうした動きはのちのシュプリームの十八番となるコラボレーションのベースとなってゆきます。
なお、かつてシュプリームによるデザイン無断使用に激怒したルイヴィトンですが、のちにシュプリームと正式にコラボレーション。
その際の秘話などはこちらからご覧ください。
・豆知識:ナイキコラボ誕生秘話
今では毎シーズン行われているナイキ×シュプリームのコラボレーション。
しかし、2002年11月にナイキが初めてシュプリームのコラボスニーカーを出すまでの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。
当時のナイキはスケートボード業界に参入すべく、シュプリームのジェームズ・ジェビアと情報交換を行っていました。
しかし、ナイキはジェビアから情報を取るだけ取ってシュプリームを切り捨て、これにジェビアは大激怒。
2001年にジェビアは報復としてナイキのフォントで「FUCK NIKE」Tシャツを製造したのです。
しかし、翌年にはナイキが再びシュプリームにアプローチ。
こうしてナイキのスケートボードライン「Nike SB」の最初期のアイテムとして、Supreme × Nike SB Dunk Lowが誕生したのです。
出典:nikesb
たった500足ずつの販売だったこのスニーカーは大きな注目を集め、シュプリームが大人気ブランドに成長するきっかけとなりました。
以降毎年のようにリリースされる両ブランドのコラボレーションスニーカー。
こちらの記事では、歴代のナイキコラボを発売順にまとめてご紹介しております。
■シュプリームのボックスロゴの秘密
・世界一有名なブランドロゴが完成するまで
「シュプリーム」と聞いて多くの人が最初に思い浮かべるのはきっとこのボックスロゴ。
赤で塗りつぶされた横長の長方形にFuturaフォントでシンプルに「Supreme」と書かれたこのロゴは、アメリカの女性アーティスト、バーバラ・クルーガーの作風から着想を得ています。
出典:gettyimages
・このロゴステッカーをNYじゅうに貼りまくれ
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1994年シュプリームの設立にあたり創業者ジェームズ・ジェビアは、ボックスロゴを19×6cmサイズにしたステッカーを1万枚印刷。
スタッフのフランク・フェルナンデス(Frank “POOKY” Fernandez)に、「このステッカーをニューヨークじゅうに貼りまくれ」と指示します。
町中の壁や手すり、はてはカルバンクライン(Calvin Klein)のモノクロポスターなどにもステッカーが貼られると、翌日には「New York TIMES」に取り上げられ、大きな話題となりました。
・豆知識:元ネタとなった現代アーティストは批判的
現在、ボックスロゴはアパレルアイテムへのプリントや刺繍のみならず、自転車、ナイフ、バスケットボール、ワイングラスなど様々な商品にプリントされ、毎シーズン高い人気を誇っています。
しかし、ボックスロゴの元ネタとなったバーバラ・クルーガーのアートコンセプトには、反消費主義をうたったものも存在。
そんなバーバラの作品から着想を得たボックスロゴアイテムが世界中で争奪戦になっている現状は、ある意味皮肉的とも言えるでしょう。
なお、シュプリームは現在世界で最も偽物やコピー品が多いブランドのひとつ。
こうしたフェイク品を撲滅すべくシュプリームが訴訟を起こしていることに対し、バーバラ・クルーガーは、2013年5月2日のCOMPLEXからのメールインタビューにて、「ダサいペテン師のバカげた茶番だ。」と述べています。
バーバラの作品を勝手にオマージュして作り上げたブランドが、その人気ゆえに量産されるフェイク品に対して怒りの声をあげるという矛盾。
彼女の強烈な皮肉が冴え渡ったコメントだと言えるでしょう。
近年、シュプリームはようやく「ボックスロゴはバーバラ・クルーガーの作品に着想を得た」と認めています。
■シュプリームが仕掛けるブランド戦略
・消費者の心理を研究したマーケティング
出典:manofmany
シュプリームが人気を集める理由のひとつに、消費者の心理を徹底的に研究したマーケティング戦略があることは間違い無いでしょう。
シュプリームは毎週ネットや実店舗で数量限定の「ドロップ」を行いますが、完売後の同一商品の再販は一切行いません(一部の定番商品は除く)。
こうした状況からシュプリームで人気のアイテムは海外で「Supremium(シュプレミアム)」とも呼ばれ、リセールマーケットで数倍、時には数十倍の値段で取引されます。
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「モノの株式市場」とも呼ばれ、スニーカーやストリートウェアを中心に商品を取りそろえるオンラインリセールサイト「Stock X」のCEOによると、毎週のシュプリームの売上は300万ドルにも及ぶとの発表を行っています。
つまり、シュプリームは単純計算で年間218億円(1ドル=140円換算)もの取引が1つのサイトで行われる驚異的なブランド。
こうしたシュプリームの人気を支えるのは「ハイプ(hype)」にあると言えるでしょう。
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ストリートシーンでたびたび使用されるハイプとは、「需要と供給がマッチしておらず、他人が入手困難なものを、+αのお金を出してでも欲する状態」を指します。
経済学などでよく使われる需要曲線がしめす通り、通常価格が上がった商品は需要が下がるもの。
しかし、時折ヴェブレン財と呼ばれる、「価格が高騰すると需要も上がる」という特殊な状況が発生します。
アメリカの経済学者であるソースティン・ヴェブレンは、「他人が買えないものを買って周囲に見せつける行動」を1899年に「顕示的消費(Conspicuous Consumption)」と名付けて提唱。
シュプリームやロレックス、そしてナイキのレアスニーカーなどは、まさしくこの「顕示的消費」を上手に活用しながら自社ブランドの価値を高めていると言えるでしょう。
・転売ヤーやBotを適度に容認
また、シュプリームはあえて転売ヤーやBotをある程度黙認することで、より商品の需要を高めているのも特徴的。
毎週ドロップされるアイテムが即完売しメルカリやスニダンといったリセールマーケットで高額転売される様は、ユーザーからの購買意欲とシュプリームのブランド価値を極限まで高めます。
ただし、こうしたファンに不利益を与えるようなマーケティング戦略は諸刃の剣。
転売やBotがさらに加速し、手動での購入が完全に不可能となってしまうと、ファンはブランドに愛想をつかすことでしょう。
そうなれば自動的に商品の需要は下がり、シュプリームのリセール価格も軒並み下落することは間違いありません。
■シュプリームのアイテムはなぜ人気?
・サブカルチャーからのインスパイア
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当然ながらシュプリームが人気を集める理由には、アイテムそのものの良さが評価されていることも間違いありません。
ボックスロゴを基調としたアイテムが目立ちがちではありますが、シュプリームの真骨頂は古今東西の音楽や芸術、コミックをはじめとするサブカルチャーからのインスパイア。
出典:ug-shaft
これはシュプリーム立ち上げ初期にグラフィック担当だったジェフ・ヒースの影響が少なくありません。
当時、Tシャツにプリントするためのイケてるグラフィックやデザインを求めて、博物館や図書館、書店などを駆け回ったジェフ・ヒース。
彼のチョイスしたアートワークを落とし込んだアパレルアイテムは、現在のシュプリームのこうした人気アイテムの原型となったのです。
・数々のコラボレーション
シュプリームの人気を語る上で避けて通ることができないのがコラボレーション。
ブランド初期のシュプリームが他ブランドとの「勝手にコラボ」によって名を広めたのは先に述べた通りですが、のちにシュプリームは数々のブランドとの正式なコラボレーションを実施することとなります。
1996年にはVansのオールドスクールとコラボスニーカーを発表。
以降Vansとは、ナイキやノースフェイスといったブランドと合わせて、毎シーズンコラボを行う関係に発展します。
また、コム・デ・ギャルソン、アンダーカバー、WTAPS、ヨウジヤマモトといった日本発のブランドとも不定期にコラボレーションを実施。
出典:uptodate
そして極めつけとなった2017年のルイヴィトンとのコラボレーションは、ストリートファッション界のみならず、普段服に興味のない一般層にもシュプリームの名を広く知らしめる結果となりました。
ルイヴィトン以降、バーバリーやティファニーといったラグジュアリーブランドとのコラボも積極的に展開。
シュプリームは本来交わることのなかったスケーターファッションとハイブランドの架け橋になっていると言えるでしょう。
■シュプリームを手がけるデザイナー
出典:niood
シュプリームを語る上で、デザイナーやクリエイティブディレクターの存在は欠かせません。
現在のシュプリームを引っ張るのは2022年にクリエイティブディレクターとして加入したトレマイン・エモリー(Tremaine Emory)。
Stüssyでのキャリアを持ち、自身のブランドDENIM TEARSも人気な彼は、ともすると「ロゴだけのブランド」などと揶揄されがちなシュプリームをさらに一段上のブランドに引き上げてくれることでしょう。
また、シュプリームはトレマイン以前のディレクターやデザイナーも実力派揃い。
彼らの多くはシュプリームを卒業後に自身のブランドを立ち上げたり、有名ブランドに転籍したりといったキャリアを積んでいます。
NOAH NYCを手掛けるブレンドン・バベンジン(Brendon Babenzie)。AWAKE NEW YORKのアンジェロ・パク(Angelo Baque)。
そしてジルサンダーやOAMCのルーク・メイヤー(Luke Meier)など、「元シュプリーム」メンバーの層の厚さは異常。
シュプリームの人気が他のストリート系ブランドと一線を画すのは、こうした優秀な才能が集まる土壌ができているからかもしれません。
■シュプリームを愛する有名人
出典:cute
当然ながらシュプリームは国内外の有名人、セレブリティからも大人気。
当サイトでは芸能人によるシュプリームの着用まとめを記事としても発信していますが、本ページでもピックアップしてご紹介致します。
・シュプリームを着用する芸能人①:ジャスティン・ビーバー
出典:front-row
・シュプリームを着用する芸能人②:ネイマール
出典:twitter
・シュプリームを着用する芸能人③:窪塚洋介
出典:ameblo
■さいごに
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回は人気ブランド、Supreme(シュプリーム)の歴史や豆知識をご紹介致しました。
数々の逸話や伝説と共に、大人気ブランドへと成長したシュプリーム。
毎シーズン何かしらのビッグニュースが飛び込んでくる本ブランドは、これからも私たちを驚かせてくれることでしょう。
FashionArchive.comではこうしたブランド解説やお役立ち情報を多数掲載中。
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