知る人ぞ知る超高級テックブランド、「アクロニウム(ACRONYM)」。
最高品質のテック素材とこれでもかと言うほどのギミックを詰め込んだ同ブランドのウェアは、服好きを唸らせる最高峰のクオリティを誇っています。
しかし、そんなアクロニウムですがその価格帯の高さゆえ手が出しづらく、着用者の少なさからまだまだ一般層には名前が知れ渡っていません。
今回の記事ではミリタリーやアウトドア、そしてストリートの色が強い高級テックブランド、アクロニウムをご紹介。
ナイキやストーンアイランドのアイテムデザインをも手がけたアクロニウムのデザイナーの来歴も含め、徹底解説致します。
■アクロニウムとはどんなブランド?
出典:calif
アクロニウム(ACRONYM)は1995年にドイツのベルリンで生まれたファッションブランド。
最新のテクノロジーやギミックを盛り込んだウェアはミリタリーやアウトドア、スポーツ、そしてストリートの要素を全て兼ね備えています。
黒を基調とするアイテムが多いアクロニウムは、動きやすさと機能性を両立したデザインを求める「テックニンジャ」と呼ばれる人々から高く評価されています。
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アクロニウムのアイテムはその複雑な服のつくりや採算度外視に近い素材使いのせいで生産量が少なく、アイテムの種類も1コレクションに15種を超えることはありません。
種類が少ない分ひとつひとつの服にはテクノロジーやギミックが盛りだくさん。
例えばネオジウム磁石入りの首元のテープ「ForceLock」はイヤホンの固定を目的に作られたギミック。
「JacketSling」は着なくても良い時に服を斜めがけできる仕様。
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また、アクロニウムのジャケットのおなじみ機能である「Gravity Pocket」はジャケットの袖口から携帯を片手で取り出せる特殊スナップを組み込んだポケット。
グラビティ(重力)の名の通り、袖のポケットに入れたモノがストンと下に落ちてくるギミックとなっています。
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このように、様々なギミックと圧倒的な動きやすさ、そして防水、防塵などの機能を取り揃えたテック素材を盛り込んだアクロニウム。
ファッションオタクであればあるほど、目が離せないブランドとなっています。
■ナイキのデザインも手がけるアクロニウムのエロルソン・ヒューとはどんな人物?
アクロニウムのデザイナーはカナダ生まれ、中国系のエロルソン・ヒュー。
中国系ジャマイカ人の両親は、建築を学ぶためにカリブ海の南国からカナダ・アルバータの森林地帯へ移住してきました。
小さい頃からデザイナーを志していたエロルソンの原点となったのは、10歳の頃に弟と共に始めた空手。
服を選ぶ際に「うまく蹴りが放てるか」だけを考えるようになるほど空手にのめり込んだエロルソン少年は、ズボンを試着しては蹴りを試し母親をうんざりさせていました。
様々なズボンを試したことで、体の動きに制限が出ないよう作られた「空手着」の服としての完成度の高さを改めて感じたエロルソンのこの体験が、アクロニウムの機能性の高さに繋がっているのです。
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ライヤソン工科大学を卒業したエロルソン・ヒューはドイツのミュンヘンで当時の恋人にして元妻のミカエラ・ザッヘンバッハーと共に広告制作会社を経営。
スポーツウェアや工業用衣服のアートディレクションやデザインを担当していた2人は、こうした服を普段着として着るブランドを作るべく、1999年にアクロニウムを立ち上げます。
こだわり抜いた素材へのアプローチと機能性の追求によって、Kit-1と銘打たれた初のコレクションの制作には3年もの年月が費やされ、2002年にようやく120点限定のジャケット、バッグ、アクセサリーが発表されることとなりました。
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ファーストコレクション以降、完成度の高いアクロニウムのアイテムはファッション界で注目を集め、エロルソンは新進気鋭のデザイナーとして認知されることとなります。
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2008年、ストーンアイランド(Stone Island)のクリエイティブディレクター、ポール・ハーヴェイが退職することが決まると、同じく素材への狂気的なこだわりで知られるエロルソンに白羽の矢が。
シャドウプロジェクト(STONE ISLAND SHADOW PROJECT)と名付けられたストーンアイランドのセカンドラインは、同ブランドが持っていたハイテク素材の使い方をさらに拡張するブランドとして成長しました。
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2013年にはナイキとのパートナーシップが開始。
アクロニウムとコラボしたナイキのスニーカーを今日に至るまで度々リリースしているほか、なんとナイキACGのディレクターもエロルソン・ヒューが務めることに。
1989年にナイキのアウトドア部門として誕生したACGは「All Conditions Gear(あらゆる状況を想定した機能性)」の略称。まさしくエロルソンがアクロニウムを通じて発信してきた理念と重なっています。
出典:oceans
2014年に再出発したエロルソン・ヒューによるACGは、2019年にレベッカ・エイルマンが引き継ぐまで人々を熱狂させました。
そのほかにもアクロニウムのスタート初期からGORE-TEXを使っていたエロルソンはゴア社のアドバイザーにも就任。
これによりゴア社が新しいGORE-TEX素材を開発すると、アクロニウムは他ブランドに先駆けていち早くそれらをプロダクトに組み込むことを許されています。
このようにエロルソン・ヒューはテック系の重鎮としてアウトドアやスポーツファッションの世界に大きな影響力を持っているのです。
■さいごに
今回の記事では、最強のテック系ブランド「アクロニウム(ACRONYM)」についてご紹介致しました。
「おしゃれ」とは全く違うアプローチでエロルソン・ヒューが素材やギミックをこだわりにこだわり抜いたことで生まれたこのブランド。
ファッショントレンドをあえて無視したアクロニウムの価値にアパレル業界が気付いた今、多くのブランドがエロルソンにラブコールを送っています。
本サイト、ファッションアーカイブ.comでは他にも様々なブランドの歴史やデザイナーの来歴をご紹介。
是非他の記事もチェック頂けましたら幸いです。