2024年7月17日16時(日本時間)、VFコーポレーションは傘下ブランドであるシュプリーム(Supreme)の売却を正式に発表しました。
ストリートブランドの雄シュプリームはここ数年大企業の元を転々としており、VF傘下となってわずか3年半での出奔となりました。
今回の記事では、VFからシュプリームを買い受けたエシロールルックスオティカ(EssilorLuxottica S.A.)を解説。
合わせてシュプリームの今後についても考察します。
■シュプリーム買収時から逼迫していたVF
今回、VFコーポレーションがシュプリームを売却した理由はズバリ業績不振。
これは「シュプリームが低迷している」というよりもVFコーポレーション全体がかなりガタついているという意味です。
そもそも遡って考えれば、シュプリームの株式をカーライルグループから購入した2020年末時点で、VFコーポレーションの業績はあまり良いものではありませんでした。
コロナ禍の影響もあり営業利益率はピークの半分まで落ち込み、財政が逼迫しているなかで21億ドルでシュプリームを買収。
買収当初、シュプリームの創業者であるジェームズ・ジェビアは「独自の文化と独立性を維持しつつ成長する」と述べていたものの、VFとしてはシュプリームの売上を一気に拡大させ、グループ全体の財政を健全化させたかったことは間違いありません。
VF傘下となって以降、シュプリームは21年にドイツ・ベルリン、23年に韓国・ソウル、24年に中国・上海と立て続けに新店舗をオープン。
1994年に誕生したシュプリームが2020年末にVFによって買収されるまでに増えた店舗数が14店舗だったことを踏まえると、あきらかにシュプリームの売上拡大を狙ったVFからの指示だったと言えるでしょう。
■買い物上手だったカーライルと、買い時をミスったVF
出典:bloomberg
2017年、投資会社のカーライルグループがシュプリームの株式を取得した際の金額は5億ドル。
シュプリーム×ルイヴィトンをはじめとする2010年代後半のシュプリームの勢いは凄まじく、VFコーポレーションは2020年に21億ドルでこれを買収します。
しかし、振り返ってみればストリートファッショントレンドはVFがシュプリームを買った時がピーク。
いずれトレンドは復調するでしょうが、VFはこの3年半の間ほとんどその恩恵を受けることが出来なかったと言って良いでしょう。
ティンバーランドやディッキーズ、ヴァンズといったVF傘下の他ブランドも、ストリートファッショントレンドの落ち着きと共に低迷。
2023年12月にVFはグループ全体で約500人の人員解雇も実施しています。
今回、VFはシュプリームを15億ドルでエシロールルックスオティカに売却。
2020年にシュプリームがVF傘下に入った際にVFが支払った額が21億ドルだったことを踏まえると、今回の売却は完全に「損切り」。
改めてカーライルの買い物上手さが際立っているとも言えるでしょう。
■エシロールルックスオティカとは?
今回、シュプリームをVFから”買った”のは、レイバンやオークリーといったアイウェアブランドを抱えるフランスのエシロールルックスオティカ(EssilorLuxottica S.A.)。
エシロールルックスオティカは、世界最大のアイウェアメーカーであるルックスオティカとフランスのレンズメーカーであるエシロールが2018年に経営統合したことで誕生。
シャネルやプラダ、バーバリーなど、数々のハイブランドのアイウェアを制作し、ラグジュアリーブランドとの繋がりも深い企業です。
カーライルは買収と売却によって利益を得るための短期的なパートナーシップとしてシュプリームを見ていました。
VFは低迷する業績を回復させるための起爆剤としてシュプリームを買収(あまり上手くいきませんでしたが…)。
エシロールルックスオティカはシュプリームの買収によって何を目論んでいるのか、今後の動きに注目です。
■シュプリームの今後
今回の買収劇、ミクロな視点で言えば2025年以降のシュプリームのアイウェアアイテムの強化が見込まれるでしょうが、それ以外でエシロールルックスオティカとの大きなシナジーがあるかは疑問なところ。
強いて言えば同じくエシロールルックスオティカ傘下であるオークリー(Oakley)とのブランドコラボぐらいでしょうか。
出典:supreme
コラボという面で言えば、VFとの関係解消によってVF傘下であるノースフェイス(The North Face)やヴァンズ(VANS)といったブランドとの今後のコラボレーションはどうなるのでしょうか?
ここについては、シュプリームがVF傘下に入るずっと以前から継続的に両社がコラボを行ってきた歴史を踏まえると、あまり心配は無さそうです。
そして、今回の移籍によってシュプリームの経営にどれだけエシロールルックスオティカが関与してゆくのかは未知数。
VFに買収されてからの3年半、シュプリームはこれまで以上のスピードで規模拡大を迫られた様子でしたが、はたして新しい “親” はシュプリームに何を求めるのでしょうか。
創業者ジェームズ・ジェビアは以下のようにコメントしていますが、その内容はVFに買われた時に放ったセリフとよく似ています。
「エシロールルックスオティカは、私たち自身がブランドに忠実であり続け、過去30年間と同じように事業を継続し成長し続けることが私たちにとってベストであることを理解しているパートナーです。この移転により、私たちはブランド、製品、そしてお客様に集中することができ、同時に長期的な成功を収めることができる」
■さいごに
今回の記事では、シュプリームを売却したVFと、その売却先であるエシロールルックスオティカについて解説しました。
本サイトではシュプリームの歴史や人気の理由、マーケティング戦略など様々な解説を行なっております。
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