あなたは「NFT」や「メタバース」というキーワードを耳にしたことがあるでしょうか。
仮想通貨やデジタルアートといったものと並列して語られることが多いこれらのキーワードは、えてして「自分には関係ないもの」と考えスルーしがち。
しかし、この「NFT」、「メタバース」がファッションやスニーカーの今後の世界に深く関わっていると言われればどうでしょうか。
直近では「NFTスニーカー」といった単語も聞かれるようになってきたNFTとメタバースの世界。
今回の記事では、普段ファッションやスニーカー関連の記事を書いている筆者が、どこよりもわかりやすくファッションとNFT、そしてメタバースの関係性について前編・後編に分けて解説します。
スニーカー業界に蔓延る転売ヤー問題の解決や、これまでになかったような全く新しいファッションデザインなど、様々な可能性に満ちたこれらの世界観。
皆様もぜひ本記事を読んで知っておきましょう!
出典:superrare
■NFTとは?
出典:sbbit
NFTスニーカーについて語る前に、そもそもNFTとは何かについて解説する必要があるでしょう。
NFT (Non Fungible Token)、直訳で「非代替性トークン」と呼ばれるサービスは、ブロックチェーンの技術を使い、コピー/複製を不可能にしたデジタルデータの事を指します。
オンライン上の取引履歴を暗号技術によって過去から1本の鎖のように繋げ、正確な取引履歴を維持しようとする技術として、ビットコインへの活用から始まったブロックチェーン。そのブロックチェーンの技術をデジタルアートなどの売買に転用したのがNFTだといわれています。
これまで、デジタル上のコンテンツ、例えば画像や音楽データ、ゲームのアイテムやデジタルアートはその複製/偽造のしやすさから、資産価値が生まれにくい状況がありました。
そこで、オンライン上のコンテンツ…例えば1枚の画像データをNFTによって裏付けすると、その画像データは自分が保有する唯一無二の存在として証明することができるようになります。
NFTの強みはその偽造の難しさと売買履歴をトレースできる点。
例えばあるアーティストの限定音源を1曲限定でNFT化した場合、これまでのようにその楽曲を違法コピーして、無限に拡散することは不可能です。
また、その楽曲を製作者から購入した人物は、別の誰かに当該楽曲を転売することが可能です。
そうなると、NFT化されたその楽曲には売買履歴が記録され、製作者からどんな人にいくらでわたり、そして次に誰にいくらで売買されたのかを半永久的にトレースすることができます。
こうしたNFT技術は前述の通り画像や音楽データだけでなく、ゲームのアイテムやアバターなどにも適用可能。
これにより、例えば自分が使わなくなったオンラインゲームの装備を別の誰かに転売することも可能になります。
その際には、これまでのようにチートを組み込んだり、不正にコピーを行うこともできません。
なおかつ販売者や購入者、価格の遍歴まで追うことができるため、有名なゲーム実況者が以前使っていたアイテムなどは、そのアイテム本来の効果以上に付加価値がつけられることも考えられます。
また、NFTは転売時に製作者にマージンが入り続ける設定を付与することも可能です。
このしくみによって、「ブックオフの中古本が売れても作者には印税が入らない」「メルカリで洋服を買ったときにデザイナーにインセンティブが入らない」といった従来の転売のマイナスポイントが一気に払拭されるのです。
コピーや偽造はできないが、転売はできる。
しかも、転売されるたびに製作者にマージンが入る。
こうした画期的な発明であるが故に、現在NFTは世界中で先行投資や市場参入がなされているのです。
■NFT技術を活用したNFTスニーカーブランド
出典:enstock4s
ここまでNFTの仕組みと、この技術の何が革新的なのかについて解説致しました。
さて、この技術をスニーカーの世界に落とし込むとどのような事が起きるのでしょうか。
それを体現するブランドといえば、このNFTスニーカーブランド「アーティファクト(RTFKT)」をおいて他に無いでしょう。
このRTFKTが制作するスニーカーやアイテムは全てバーチャル上の存在。
しかし今、RTFKTがリリースするNFTスニーカーやスキンの中には、数百万円、ものによっては数千万円の値が付けられているものも少なくないのです。
その理由は、現実世界のスニーカーと同じく、数量限定販売を行うことで市場価値が高騰しているからにほかなりません。
しかも、RTFKTが製作したNFTスニーカーは、全てNFT化されることで複製や偽造ができないことも大きいでしょう。
直近ではRTFKTがナイキに買収され、初のコラボレーションとしてNFTスニーカーのダンクが発売されたことも話題を集めました。
出典:sneakernews.
実はこのRTFKTをはじめとするNFTスニーカーやスキンの世界はすでにファッション業界で少しずつ広がっております。
様々な高級ブランドが次々とNFTアイテムの開発に乗り出しており、バーチャル世界におけるブランド間の競争が今後ますます拡大してゆくことでしょう。
現実世界で我々がアトモスやシュプリームに並んでいる間に、投資/投機目的も兼ねて、NFTスニーカーが高値で売買されている世界がオンライン上で生まれているのです。
■アパレル・スニーカー業界で起きている地殻変動
では、NFT技術の発展やバーチャルファッションの盛り上がりがファッション、スニーカー業界にとってどれだけ画期的なのでしょうか。
最もファッション業界にとって革新的なことといえば、当然ながら現実世界では表現できなかったシルエットやデザインが可能という点が挙げられるでしょう。
NFTスニーカーやNFTファッションはその存在が現実世界のものではないゆえに、少し乱暴な言い方をすれば、どんなデザインであろうとも成立します。
例えば、これまでパタンナーが創意工夫を凝らして様々な素材を切り貼りしながら作ってきた美しいシルエットやドレープ感。
スニーカーデザイナーが重量の関係から泣く泣く削ったデザインたち。
こうしたこれまで人の形に合わせてあるいみ「デザインを制限されてきた」ファッションデザインが、バーチャル上であればいかなる形で表現することも可能なのです。
機能性や素材原価の制限、パーツの重量など、ありとあらゆる制約から解き放たれたNFTスニーカーやデジタルファッションの登場は、これから多くのデザイナーやクリエイターの創作意欲を刺激してゆくことでしょう。
メタバースの世界で使えるNFTスニーカーならば、例えばソールにジェット機能を取り付けて、高速でメタバース世界を飛び回るシューズだって作れるかもしれません。
出典:news2021
また、バーチャル上の世界であれば、現実世界のファッション業界のトレンドとは別のトレンドが生まれてくるかもしれません。
すでに現実世界では古臭いデザインに思えても、バーチャル上でアバターが着用すれば意外としっくりくる、といった可能性は大いに考えられるでしょう。
こうした状況はこれまでのファッション業界の歴史を振り返ってみてもありえなかったこと。この世界観がどれだけ革新的かをイメージできたかと思います。
■次回:NFTとメタバースがあたえるファッションへの影響
ここまで、NFTスニーカー・デジタルファッションの関係性や革新について解説致しました。
さて、NFT化されたこれらのファッションアイテムは、メタバース世界においてはどのような役割を担うのでしょうか。
後編では今後の世界の最大の成長産業とも言える、メタバースとの関係性について解説致します。