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どうなるZARA?!アパレル業界時価総額世界一の座をユニクロに明け渡したZARAの今後を占う

2021年2月15日はアパレル業界にとって、そして日本全体にとってアイコニックな1日となりました。

この日、日経平均株価は30年6ヶ月ぶりに終値ベースで30,000円を突破し、この記事を書いている2月21日現在においてもその状況は続いています。
「日経平均株価の高値」と聞いて最初に皆が思い浮かべるのはきっとバブル景気。1989年に算出開始以来の最高値38,957.44円を記録したバブル景気は、1991年3月ごろから崩壊したと言われています。

そんな、まさしく「バブル以来30年ぶり」の快挙とともに高値を見せる日系企業の中でも、とりわけその存在感をみせていたのがユニクロやGUを擁するアパレル大手「ファーストリテイリング」です。

過去半年間で7,100円上昇した日経平均株価において、ファーストリテイリング株は1銘柄で約1,700円の押し上げ。
つまりファーストリテイリングによる全体の2割強の株価押し上げが無かったならば、日経平均30,000円台は成されなかったと言えるでしょう。

今回の記事では、株価高騰によってZARAを擁する「インディテックス(Inditex)」を抜き、遂に時価総額でアパレル世界一の座に輝いたユニクロ帝国の栄華は続くのか、そして1位の座を明け渡したZARAの今後はどうなるのかを考察します。

■ユニクロとZARA


出典:worldstopmost

ユニクロ(ファーストリテイリング)創業者である柳井正は2000年12月の週刊東洋経済の取材で今後の展望を訊かれ「世界一、それ以外ないですよね」 と語りました。

それから約20年、2003年発売のヒートテックや2010年のウルトラライトダウン、そして2012年のエアリズムといった今日においても超定番商品となるアイテムの開発や、2009年の+Jコレクションを皮切りとするハイブランドデザイナーを招聘したコレクションによってユニクロは劇的な成長を重ねてきました。

対するZARAの成長要因はと言えば、その圧倒的な商品生産スピードと販売体制にあると言えるでしょう。
「商品企画から店頭に並ぶまでに最短3週間」と言われるスピード感が強みのZARAは、世界のハイブランドのコレクション発表を即座に模倣し、最先端のトレンドとデザインを低価格かつ圧倒的な速さで提供する、いわゆる「ファストファッション」を体現するようなビジネスモデルを構築することによって、長年アパレル世界一の座に君臨していました。

■ZARAとユニクロのビジネスモデルの違い

前項で述べたように、同じファストファッションの領域においても、ユニクロとZARAのビジネスモデルの違いは明らかです。
ターゲットとする顧客において言えば、ユニクロが老若男女を問わず着られるベーシックな服装を提案するのに対し、ZARAはオシャレ感度の高いユーザーに最新のトレンドやデザインを安価で提供する。

ユニクロがヒートテックのように10年20年とベーシックな同じアイテムをマス層に売り続けることによって毎年の「買い足し」を促していたのに対し、ZARAは1アイテムあたりの生産数を最小限に絞った売り切りモデルを採用し、毎週のように店内の在庫を入れ替え、常に最新のファッションを提供することで高感度なファッショニスタたちの「買い替え」需要に応えてきました。

ユニクロの柳井正が「人の生活を豊かにするための、生活ニーズに即した服」を提唱すれば、ZARAのアマンシオ・オルテガは「世界中のすべての女性におしゃれになって欲しい」と、自社のコンセプトを発信しました。


出典:cordmagazine

実はこのビジネスモデルの違いが、直近の世界状況の変化において両社の明暗を分けていると言っても過言では無いと言えるでしょう。

■サスティナブルトレンドとコロナ禍による顧客のマインド変化

近年世界中が取り組むSDGs(持続可能な開発目標)の流れはアパレル業界にも深く浸透し、特に若年層世代がファッションアイテムを選ぶ際の基準において、デザインや価格と同様に「サスティナブルかどうか」が重要なファクターを占めるようになってきています。

2001年にスタートのイギリス発ブランド、ステラマッカートニーが早くから提唱したノーファー、ノーレザー、ノーフェザーの姿勢。


出典:hypebeast

そして2006年から2015年にかけて、シュプリーム(Supreme)のクリエイティブディレクターを務めたブレンドン・バベンジン(Brendon Babenzie)が手がけるNOAH(ノア)が取り組む、服の過剰包装による環境問題や縫製工場の低賃金労働に取り組む動きなどは、確実に顧客がブランドを選ぶ際の指針となっています。


出典:pinterest

また、何より大きいのがファッション業界全体の大問題とも言える、洋服の大量廃棄問題です。
売れ残りの洋服をセール価格で販売することによるブランド価値低減を恐れ、「安く売るくらいなら燃やそう」という姿勢を持っているハイブランドは未だに数多く存在しますし、多くのファストファッションブランドは「顧客が次から次へと新しい服を安価で買い続ける」ことが前提のビジネスモデルとなっています。

こうしたファッション業界の状況のなか、若年層を中心としたサスティナブルを重要視する人々の「ZARA離れ」を食い止めようと、インディテックスは企業ページTOPなどで必死に自社の商品がいかにサスティナブルかどうかをアピールしています。

しかし、ZARAのビジネスモデルの根幹とも言える「圧倒的なスピードで次々と新アイテムを安価で発売し、どんどん買い替えてもらう」スタイルからの転換が無い以上、顧客のZARAに対するイメージの転換が難しいことは明らかです。
また、サスティナブルと並んでZARAを苦しめているのがコロナウイルスの蔓延を原因とした人々のファッションに対する価値観の変化だと言えるでしょう。

外を出歩く機会が世界中で圧倒的に減った今、求められている洋服は「トレンドを意識したハイデザインなアイテム」から、「在宅勤務やおうち時間を彩る高機能で心地よいリラックスウェア」へガラリと変わってきています。

各ハイブランドの2021年春夏コレクションを眺めてみていても、各ハイブランドが打ち出すリラックスウェアやディオール(Dior)のサンダルスタイルなど、どのブランドも明らかに「おうち時間」を意識したアイテムが数多く見られており、コロナ禍をめぐる世界情勢の転換によってファッショントレンドも大きく変化していることが伺えます。


出典:popbee

こうしたトレンドの変遷がむしろ追い風になっているのがユニクロです。
外に出ることが減った中、安価で高機能なベーシックスタイルが強みのユニクロのアイテムは、本来ZARAの顧客層でもあったはずのファッション感度の高い人々からも広く受け入れられ、その業績を伸ばしています。

■ZARAの新たな脅威「SHEIN」の台頭

ZARA擁するインディテックスにとって、さらなる脅威となってくるのが「中国版ZARA」と揶揄される新興アパレル企業、シーイン(SHEIN)の存在です。

2008年に南京で創業したファストファッションブランドであるSHEINは、現在アメリカのティーン層を中心に絶大な人気を誇っており、パイパー・サンドラーの最新調査「Taking Stock With Teens」にて、「10代の若者が好きなeコマースサイト」のランキングにおいては、ナイキ(NIKE)やPacSunといった大手を抑えて、なんと2位に輝いています(1位はAmazon)。

SHEINの商品展開のスタイルはまさしくZARAと同じ「最新のトレンドやデザインを素早く商品に落とし込み、安価で世界中に展開する」モデルとなっていますが、ZARAには無い大きな強みが2つ存在しています。

1つめの強みはSHEINが「実店舗を持たないオンライン販売特化」のブランドであることです。
年々ファッションアイテムをECで購入する人々が増えてきている状況の中、これまで大都市の一等地に店舗を構えることで認知とブランド価値を高めてきた従来のアパレルブランドのビジネスモデルに変化が訪れています。

ECの成長によってトレンドとなるアイテムも試着を必要としない「オーバーサイズ」のものが人気を集めている現在、コロナ禍によって人々が外出をしなくなったことでその動きは加速。
ZARA擁するインディテックスも2021年までに傘下ブランドの1,000〜1,200店舗の閉鎖を余儀なくされています。

そんな中、「実店舗」という固定費を持たないSHEINは、自社ブランドをインスタグラムやTikTokのインフルエンサーを使って訴求し、コロナ禍においても効果的な認知拡大を促しています。

2つめの強みとしては、商品をデザインしてから顧客に届けるまでで、ZARAをも超える圧倒的なスピードを有しているという点です。
ZARAの大きな強みだった「最短3週間」の商品展開のスピードは、ZARAの母国スペインでデザインを作ると、近隣のポルトガルやモロッコといった生産拠点で商品を製作、そして張り巡らされた流通網を通して世界中のZARA店舗にハイスピードで届ける、というものでした。
ユニクロを含む多くのアパレルブランド同様に、コストやリソースの観点から近隣国に生産拠点を持つZARAに対し、SHEINの強みは縫製等を行う生産拠点を広州などに置くことで、デザインから商品完成までを中国1カ国で賄っているのです。

こうした「中国ワンストップ」で製作したアイテムを即座にECサイトに掲載することにより、SHEINはデザインからリリースまでのリードタイムを驚愕の「最短3日間」で行っています。

こうした背景からSHEINは近年急成長を遂げており、2019年の年商約2,500億円から2020年には年商約1兆円と、脅威的な成長率でビジネスを拡大しているのです。

■現地へのローカライズの重要性

ZARA (インディテックス)の今後を占う上でもう一つ重要な点があるとするならば、現地へのローカライズの有無だと言えるでしょう。

ZARAはこれまでパリやミラノ、そして東京の最先端トレンドファッションを世界中に展開する上で、あえて各国むけにローカライズしないことで利益率を高めていました。

そもそもZARAがこれまでターゲットにしてきた顧客層はファンション感度が高く、パリやミラノのハイブランドを上手に着こなすことの出来る人々が中心だったことが幸いし、同社のビジネスモデルは健全に回っていたと言えるでしょう。

しかし、近年同様のビジネスモデル(=現地向けにローカライズをしない)で大きな売り上げを誇ってきたForever21が破綻した今、今後も各国向けにローカライズした商品を出さずにいることが果たして吉と出るか凶と出るかは注視が必要です。

もちろん、自社で商品製造を行わないOEM型モデルによって迅速なトレンド把握ができなかったForever21と、SPA(製造小売)型モデルを採用し、トレンドに合わせてスピード感を持った商品製作が可能なZARAを単純に比較することは難しいでしょう。

なお、ZARAと同じくSPA(製造小売)型モデルを採用するユニクロでは、商品を海外展開する上で各国へのローカライズを積極的に行っております。
しかし、2019年にインドに進出を果たしたユニクロが、インド人デザイナー、リナ・シンとともにリリースしたインド現地の民族衣装クルタは、残念ながら現地で大きな話題を呼ぶことはありませんでした。


出典:onmanorama

今後、商品開発をさらに強化し、現地の人にも愛されるローカライズ商品を目指すユニクロが勝つのか、それともあくまで最新のトレンドやデザインを形を変えずに世界中に届けるZARAモデルが勝つのか、その明暗は今後数年間で明らかになりそうです。

■さいごに

今回、ユニクロを擁するファーストリテイリングの時価総額が、ZARA擁するインディテックスを抜いて世界一位となったことを踏まえ、今後のファストファッションのあり方や展開について考察しました。

ベーシックアイテムをコンセプトに各国へローカライズを行いながら世界一位となったユニクロ。
ZARAモデルをアップデートし、なおかつ商品をアメリカのティーン層向けにローカライズするSHEIN。
そして両社の猛進撃やコロナ禍を含む世界情勢に対してZARAがいかにしてビジネスの舵取りを行なっていくのか、今後も目が離せません。

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