直近では少し落ち着きを見せつつあるものの、ストリートを中心としたスニーカーブーム、特に有名ブランドや著名アーティストとのコラボレーションスニーカーに対する人気は未だ根強く続いています。
そしてここ数年のスニーカーブームの中心となったのは、2017年から19年にかけて発売のたびに熾烈な争奪戦を繰り広げた「The Ten」コレクションによるものと言って問題ないでしょう。
2013年のブランド立ち上げ以来、あっという間に「世界で最も人気なブランド」の頂点まで駆け上がったオフホワイト(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)と、スニーカー界の帝王であるナイキ(Nike)のコラボレーションは、多くの新規スニーカーファンを生むきっかけにもなりました。
惜しまれつつも「The Ten」コレクションは2019年に終了しましたが、その後も2020年現在に至るまでナイキとオフホワイトのコラボレーションスニーカーは不定期にリリースが続いています。
今回の記事では、そんなオフホワイトとナイキのコラボレーションスニーカーのうち、The Tenコレクションとしてリリースしたモデルについて一挙紹介してゆきます。
■The Tenコレクションについて
2017年、当時新進気鋭のラグジュアリーストリートブランドとしてその人気を高めていたオフホワイトの創業者兼デザイナーであるヴァージル・アブローは、スポーツブランドの雄、ナイキとのコラボレーションを発表。
構想から僅か半年あまりでヴァージルはナイキの名作スニーカー10種(うち1種は米ナイキ子会社であるコンバースのチャックテイラー)をオフホワイト流に再構築した「The Ten」コレクションを発表しました。
エアジョーダン1、エアプレスト、エアヴェイパーマックスを除き、白を基調として再構築された第一弾のコレクション10足は2017年11月9日に同時発売がなされ、日本においてもコンバースのチャックテイラーモデルを除いた9種が一挙に発売されました。
コレクションでリリースされたスニーカーたちはどれもシュータンをあえて切りっぱなしにしたり、蟹の足に付いているようなタグがシューレースに付いていたり、はたまた各シューズのサイドにはオフホワイト特有の引用符に挟まれた文字やモデルとなったスニーカーの詳細がプリントされていました。
オリジナルモデルへのリスペクトを保ちつつDIY感溢れる見た目へアップデートされたこれらのスニーカーはどれも大きな話題を呼び、第一弾として2017年に10種一斉リリースされた後、2年にわたって各モデルの新色を不定期にリリース。
これらはどれも発売のたびに大きな注目を集めました。
以降の記事で、コレクションの全10種のスニーカーについて、詳細の各カラー展開と共に紹介させて頂きます。
■AIR JORDAN 1 (エアジョーダン1)
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The Tenシリーズの中でも最も人気が高いのは、通常モデルも常にプレミア化を誇るエアジョーダン1とのコラボレーション。
特に第一弾コラボでリリースされたシカゴカラーのモデルは、リセール市場において50万から100万円の値付けがされることもある1足。
オフホワイトのデザイナーであるヴァージル自身もシカゴ出身であり、地元の英雄マイケル・ジョーダンへのリスペクトが窺えるこちらのスニーカーは、The Tenコレクションの中でも最も作り込まれた1足となっています。
2018年3月には海外でオールホワイトが、そして同年6月にはライトブルーが鮮やかなUNCカラーのモデルが国内SNKRS含めリリースされました。
なお、2020年にはCANARY YELLOWと呼ばれるモデルのリリースが噂されており、その続報が待たれるところです。
■AIR PRESTO (エアプレスト)
出典:farfetch.
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ナイキのトビー・ハットフィールドは、0.5cm刻みで作られるスニーカーに対する挑戦か、「Tシャツにハーフサイズはありません。
私たちが履物で同じことを試したら?」との思いとともに、スニーカー史上初のS・M・Lサイズ展開でリリースされたスニーカー、エアプレストを2000年にリリースしました。
「履くTシャツ」との呼び声も高いエアプレストの快適性はオフホワイトコラボでも健在。
第一弾コラボでは黒いアッパーに骨を思わせるカラーでソールとシューレース周りを飾ったモデルが話題を呼びました。
2018年7月にはオールブラックで構築されたモデル、2019年8月(海外は3月)にはオールホワイトのモデルがリリースされました。
■AIR MAX 90 (エアマックス90)
出典:sneakernews
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1987年に発売された「エアマックス1」、1989年発売の「エアマックスライト(AIR MAX LIGHT)」に続く3代目エアマックスであり、その名の通り1990年に初リリースされたエアマックス90は、エアマックス狩りが社会問題にまでなるほどの話題を呼んだエアマックス95と並び、シリーズの中でも屈指の人気を誇るモデルです。
そんなエアマックス90とオフホワイトのコラボモデル第一弾では、白を基調とした半透明のアッパーやソールが美しいモデルとなっていました。
次いで2019年2月にはオールブラックと砂漠を思わせるようなライトブラウンのモデルが同時発売。
ちなみに筆者はこのライトブラウンのモデルをSNKRSで当てることができたのが密かな自慢です。
■AIR MAX 97 (エアマックス97)
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「ナイキ エア」の原点とも言えるソール部分の透明なクッショニング「ビジブルエア」は、1987年リリースの初代エアマックスではカカト近くの小窓から小さくその姿を垣間見ることが出来るのみでした。
そこから12年後の1997年にリリースされたエアマックス97で、我々は遂にビジブルエアがヒール全周に渡って搭載されたシューズと出会うこととなりました。
そんな歴史的な1足であるエアマックス97をヴァージル・アブロー流にアップデートした本モデルは、オリジナル版では立体的に波打っていたアッパー素材を平面的に潰しこみ、よりスマートに仕上げています。
コラボ第一弾モデルは透明感あふれるオールホワイトのモデルが発売。
18年10月には虹色のスウッシュがサイドに光るグレーのモデル。
11月には第一弾モデルを反転させたかのようなカラーのブラックモデルがリリースされました。
また、前述の3つのモデル以外でも、ニューヨーク限定でテニス界の女王、セリーナ・ウィリアムズとナイキ、そしてオフホワイトのトリプルコラボ「ザ・クイーン・コレクション」がリリースされ、ピンクゴールド、パープル、ショッキングピンクのグラデーションが色鮮やかなエアマックス97が発売されました。
■REACT HYPERDUNK 2017 (リアクトハイパーダンク2017)
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バスケットボール用の最新かつ革新的なクッショニングであるリアクトフォームを採用したリアクトハイパーダンク2017は、抜群の反発力から激しい長時間のプレーにおいても高いパフォーマンスを発揮し続けるバスケットボールシューズとして人気を集めています。
The Tenコレクションによる本モデルでは通常のハイパーダンク2017には存在しないマジックテープのベルクロが追加され、ホールド感がさらに強調された1足になっています。
ちなみにこのモデルは、The Tenコレクションの中で唯一、第一弾以降の別カラーがリリースされていないスニーカーとなっています。
■BLAZER MID (ブレーザー ミッド)
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ビンテージファンから絶大な人気を誇るナイキのノンエアスニーカー、ブレーザーをオフホワイト流に再構築したこの1足では、ナイキのスウッシュが巨大化しソールまで侵食しているのが大きな特徴です。
2017年の第一弾コラボではオールホワイトにスウッシュのみが黒いモデルがリリースされ、翌18年の10月には、カボチャを思わせるカラーが特徴のオールハロウズイヴ(All Hollows Eve)と、死神をモチーフとした黒主体のグリムリーパー(Grim Reaper)というハロウィンをモチーフにした2種がリリース。
また、同日セリーナ・ウィリアムズの「ザ・クイーン・コレクション」モデルのブレーザーも登場。3種のブレーザーの同日発売は大きな注目を集めました。
■AIR VAPORMAX (エアヴェイパーマックス)
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ナイキのビジブルエアユニットが9つのパーツに分解され、極上の吐き心地を実現したエアヴェイパーマックス。
そんなエアヴェイパーマックスをヴァージルが再構築した1足は、他のThe Tenコレクションと比べればオリジナルモデルからのアレンジ箇所が少ないモデルとなっています。
そのためか偽造品の数もコレクションのスニーカーの中ではおそらく最大とも言われ、街で見かけることも多いモデルとなってしまっています。
そんな少し悲しいエアヴェイパーマックスコラボですが、ビジブルエアを含めブラックのボディに白のスウッシュ、そして他のThe Tenコレクション同様に引用符に挟まれた「AIR」の文字等が描かれたモデルが第一弾として他の9足と共に2017年11月にリリースされました。
2018年3月には前作では白色だったスウッシュがアッパーの色を反映する透明な素材に換えられ、シュータンも黒色へと変更となったオールブラックモデルが登場。
また、翌月にはオールホワイトのモデルがリリースされました。
■ZOOM FLY(ズームフライ)
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カーボンファイバープレートの推進力と安定性から、マラソン選手のトップ集団の足元を飾ることも多いズームフライをオフホワイト流に再構築したこの1足は、これまでバスケットボールシューズやスケートシューズにばかり足を通してきたストリートキッズにとっては新感覚の履き心地と見た目だったことでしょう。
足が透けるほどの薄型アッパーと超軽量ソールが特徴のこのモデルは、17年の第一弾ではオールホワイトのモデル、第二弾ではブラックとピンクのモデルが18年12月にリリースされました。
第二弾のリリース当時、ドーバーストリートマーケットギンザでの入店抽選に当選した筆者が店舗に向かうと、ブラックとピンク両方とも購入可能と伝えられ、非常に驚いた記憶があります。
■AIR FORCE 1 LOW (エアフォース1 ロー)
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アディダスを代表するスニーカーがスタンスミスなら、近年のナイキを代表するスニーカーはエアフォース1 ローだと言って差し支えないでしょう。
そんなエアフォース1をオフホワイト流にリメイクしたこの1足は、これまでリリースしたオフホワイトとナイキのコラボレーションシューズの中でも最もカラー展開の多いスニーカーとなっています。
第一弾コラボでは半透明の素材を使った白いアッパーとソールがスマートな印象を見せ、続く2018年12月には蛍光グリーンが眩しいボルト(VOLT)と、第一弾の色反転モデルとも言えるブラックがリリースされました。
なお、オフホワイトとナイキのコラボレーションにおいて、このエアフォースワンについては先にご紹介した3足以外にも不定期に別カラーがリリースされており、The Tenコレクションでは無いことの証か、そのどれもがスウッシュが銀色に変更されております。
ヴァージルが回顧展を開く美術館などでゲリラリリースされることの多いこれらのモデルは、これまで白、黒、水色などがリリースされており、今後も新色のリリースが期待されています。
■Converse Chuck Taylor CTAS ’70 Hi(コンバース チャックテイラー)
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「ナイキの名作スニーカーをオフホワイト流に再構築する」というコンセプトで始まったこのThe Tenコレクションにおいて「なぜコンバースのスニーカーが紛れているのか」と疑問に思った方もいらっしゃることでしょう。
バルカナイズド製法を巧みに使ったスニーカーで一斉を風靡した米コンバース社は、実は2001年に業績不振を理由に破綻。
2年後の2003年に3億1500万ドルでナイキ社に買収されているのです。
このあたりの歴史については、別記事にて詳しく解説しておりますので、ぜひ合わせてご覧ください。
こうした経緯から、オフホワイトのThe Tenコレクションにおいては、コンバースの名作チャックテイラーをオフホワイト流にリメイクしたモデルが発表されましたが、同モデルは日本では発売がなされませんでした。
その理由は、現在日本国内で販売されているコンバース製品が伊藤忠傘下のコンバースジャパン株式会社をベースに製作、販売されており、米ナイキ社傘下にある米コンバース社とは完全に切り離されているからに他なりません。
米コンバース社製のスニーカーは日本国内での販売が認められていないことから、こういった残念な事象が起こってしまっています。
コレクションに話を戻すと、ヴァージルはチャックテイラーのアッパーを靴下が透けるほどの半透明素材で構築し、ソールには伝統的なゴム加工技術、バルカナイズド製法へのリスペクトか「VULCANIZED」の文字が引用符と共にプリントされています。
バルカナイズド製法の発明とコンバース社による同製法の活用については、下記の記事からご確認ください。
2018年10月には第二弾として、コンバースの原点とも言えるキャンバス素材を使ったモデルが海外でリリース。
ソールにはオフホワイトのシンボルとも言える斜めストライプが施されていました。
■さいごに
今回はオフホワイトとナイキのコラボレーションスニーカーのうち、その原点とも言えるThe Tenコレクションのアイテムのみをご紹介致しました。
同コレクション以外にも、オフホワイトとナイキはダンクやエアジョーダン5、そして前述のエアフォース1のゲリラリリースなど、数々のコラボレーションスニーカーを繰り返し発売しており、そのたびに大きな話題を呼んでいます。
冒頭でも言及した通り、両者のコラボレーションが近年のスニーカー界の成長に大きく寄与していることは間違いありません。