知らぬ人の居ない永遠の定番ローテクスニーカーブランド、コンバース。
100年前にアメリカの北部、マサチューセッツで生まれたこのブランドのスニーカーは、時を経ても色あせることのないデザインが世界中で愛され、年間収益2,000億円を稼いでいます。
今回の記事では、そんなコンバースの歴史や、代表的なシューズについてご紹介致します。
■天然ゴムソールの誕生
-チャールズ・グッドイヤーの発見
コンバースの歴史を語るのであれば、まずは天然ゴムの加工技術「バルカナイズド製法」について触れなければならないでしょう。
アメリカ合衆国ペンシルベニア州のチャールズ・グッドイヤーはフィラデルフィアで金物店を営んでいましたが、1837年よりおよそ7年に渡ってアメリカ全土の景気を大きく後退させた金融恐慌の影響を受け、生活が困窮するほどに経営は落ち込んでいました。
ハンコックは硫黄などの添加物がゴムの耐久性や耐熱性を底上げする事象を体系化し、その製法を確立します。
-ゴム引きコートの発明
なお、トーマス・ハンコックはチャールズ・マッキントッシュと共に、コートの名門ブランド「マッキントッシュ」を設立していました。
1843年にマッキントッシュが死去すると、コートに硫黄ゴムを流し込みレインコートに応用。
これが今日においても同ブランドで毎シーズン展開され人気を呼ぶ名作「ゴム引きコート」の原型となりました。
■コンバース社の創業と成長
-コンバース社の創業
ローマ神話に登場する火の神「バルカン(Vulcan)」から取ったこの製法は、その後約60年の時を経てシューズの製作に利用されるようになります。
1908年、アメリカ北部のマサチューセッツ州モールデンでコンバース社が創業します。
創業者マーキス・ミルズ・コンバースは降雪量が多いマサチューセッツ州の気候にあったシューズの製作にあたってバルカナイズ製法に着目。
ブーツを思わせるようなスリムなシルエットにキャンバス地とバルカナイズ製法のゴムソールを施したこのバスケットボールシューズは、永遠の名作として、当時の製法からほとんど手を加えられることもなく、今日においても人々の足元を飾っています。
全米の高校や大学をまわりオールスターの普及に尽力します。
こうしたチャックの普及活動によりコンバースはバスケットボールシューズのトップ企業として認知を得ます。
1936年にはじめてオリンピックの正式種目にバスケットボールが追加された時も、選手らの足元を飾った靴の多くはオールスターでした。
そして戦後間もない1946年、現在のNBA (National Basketball Association)の前身であるBBA (Basketball Association of America)が発足されると、テイラーの功績を称え、コンバース社はロゴマークを一新。
そのロゴの中にチャック・テイラーの筆記体サインを加えています。
合わせてオールスターのカカトのパッチ部分にもチャック・テイラーの文字を入れ、これが今日におけるシューズモデル「チャック・テイラー」の原型となっています。
現在コンバース社が提供するスニーカー「チャック・テイラー」は、ヒールパッチの色やソールの厚さなどの小さな差異を除きオールスターとほぼ同じシルエットをしており、オールスターと合わせて広く流通しています。
-ジャック・パーセルの誕生
1936年のベルリンオリンピックでアメリカのバスケットボールチームがオールスターを着用して優勝を果たしていたその頃、オールスターと並びコンバースを代表するスニーカー「ジャック・パーセル」の原型も産声を上げていました。
カナダ出身の伝説的なバドミントン選手、ジョン・エドワード・ジャック・パーセルは全米大手ゴムメーカー「B.F.グッドリッチ社」にバドミントンの激しい横運動に耐えうるグリップ力を持ったシューズの開発を依頼。
1935年に誕生したB.F.グッドリッチ社製のシューズ「ジャック・パーセル」は、ヒールラベルはそのデザインから“ヒゲ”の愛称で親しまれ、またトゥ部分のラインは微笑んでいる口元のように見えるため”スマイル”とも呼ばれ、愛されました。
シンプルで洗練されたデザインは今日においてもほとんど変更が加えられず、今尚根強い人気を誇っています。
その後1973年に生産が終了すると、後継モデルとして2本のラインが省略された「ワンスター」が翌1974年に発売されます。
シンプルで使いやすいデザインもさることながら、コストの問題で生産がわずか2年で終了したことで希少性が増し、名機として後世まで語り継がれています。
なお、再販の声に押され1984年に日本製のものが復刻、その後も復刻を何度か行い、現在はレギュラーラインとして広く流通、販売しております。
■さいごに
今回の記事ではコンバースの黎明期の歴史をオールスターやワンスターなどの名作モデルと共にご紹介しましたが、ナイキとの関係や紹介しきれなかった名作モデルなども、まだまだ語り足りない部分が数多く残っています。
オールスターの誕生から100年以上が経ち、その間スニーカーというプロダクトは数々のブランド、メーカーから発表されてきました。
しかし、2020年現在、街を出歩くと当時のデザイン、製法からほとんど変わらないコンバースのシューズをそこかしこで見かけることができるはずです。
ぜひ、本記事を踏まえて、時を超えても愛され続けるコンバースの完成され尽くしたデザインに今一度目を向けていただければ幸いです。