1994年にニューヨークの小さなスケートボードショップから始まったシュプリーム(Supreme)。
今やストリートのみならず世界のファッションブランドの中でもトップクラスの人気と知名度を誇るモンスターブランドに成長しました。
開業当初はスケーター向けのセレクトショップとしての側面が強かったシュプリームですが、ボックスロゴTシャツを始めとするオリジナルアイテムが人気を博すと、次第に毎シーズンのコレクションとして様々なオリジナルプロダクトをリリースするようになります。
そんなシュプリームの成長と共に巨大化したデザインチーム。
そこにはのちにオリジナルブランドをスタートさせたデザイナーや、トップブランドのクリエイティブディレクターに招聘された人物も多数所属。
今回はそんなシュプリームのデザインチームが輩出したデザイナーと、彼らの手掛けるブランドを8つご紹介致します。
この記事さえ読めば貴方がシュプリームについてより詳しくなれること間違いなしです!
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目次
- ■トレマイン・エモリーのDENIM TEARS
- ■トレマイン・エモリーのNo Vacancy Inn
- ■ニック・アトキンスの8 ball zines
- ■アンジェロ・バクのAWAKE NY
- ■ブレンドン・バベンジンのNOAH NYC
- ■マックス・ヴァンダーウッド・グロスのPROPER GANG
- ■ルーク・メイヤーのOAMC
- ■ルーク・メイヤーのJIL SANDER
- ■豆知識:ジル・サンダー氏のその後
- ■さいごに
■トレマイン・エモリーのDENIM TEARS
出典:highxtar
・シュプリーム時代の役職:クリエイティブディレクター(現任)
まずご紹介するのは、2022年からシュプリームのクリエイティブディレクターを務めるトレマイン・エモリー(Tremaine Emory)のデニムティアーズ(DENIM TEARS)。
「デニムの涙」と名付けられたこのブランドは、アフリカ系アメリカ人の奴隷制度にスポットを当て、そのストーリーを発信することをブランドの理念としています。
アフリカのガラ・ギーチー族の職人技術であるキルティングスケッチを取り込んだシャツや、アメリカに渡った黒人奴隷の主な仕事だった綿花摘みをイメージしたデニムをリリースしているデニムティアーズ。
そのメッセージ性に共感したセレブリティも多く、カニエ・ウェストやオフセット、エイサップ・モブなど、多くの有名人ファンの着用も注目されています。
■トレマイン・エモリーのNo Vacancy Inn
出典:hypebeast
・シュプリーム時代の役職:クリエイティブディレクター(現任)
トレマイン・エモリーが手がけるもう一つのプロジェクトが、このノー・バカンシー・イン(No Vacancy Inn)。
元ナイキ所属のアサイド(Acyde)とトレマインのデュオであるこのノー・バカンシー・インは、ブランドであり、パーティーであり、そして時にラジオ番組でもあります。
ブランドとしてのノー・バカンシー・インは、ニューバランスやマルニ、ステューシーといった有名ブランドともコラボレーション。
出典:ssense
そして、ノー・バカンシー・インが不定期に主催するパーティーでは、Yeことカニエ・ウェストや故ヴァージル・アブロー、エイサップ・ロッキーからリック・オウエンスまで、音楽やファッションの重鎮が参加。
そんな強烈なコネクションと存在感を持つトレマインだからこそ、シュプリームから白羽の矢がたったのかもしれません。
■ニック・アトキンスの8 ball zines
・シュプリーム時代の役職:ヘッドデザイナー(現任)
1982年アメリカ・ボストン生まれのニック・アトキンス(Nick Atkins)はヘッドデザイナーとしてトレマイン・エモリーと共に現在のシュプリームを牽引する人物。
彼はクリエイティブ集団エイト ボール ジンズ(8 ball zines)のメンバーとしても活動。
出典:hypebeast
そのグラフィックやアート作品はドーバーストリートマーケットなどでもポップアップが開催されています。
■アンジェロ・バクのAWAKE NY
・シュプリーム時代の役職:マーケティングマネージャー/ブランドディレクター
アウェイク ニューヨーク(AWAKE NY)を手掛けるアンジェロ・バク(Angelo Baque)は、西海岸ストリートファッションの雄であるステューシーで経験を積んだのちに、シュプリームにジョイン。
2007年以降10年にわたり、シュプリームのアートディレクションやマーケティングを手掛けてきました。
そんなアンジェロが2011年にスタートしたアウェイク ニューヨーク。
ニューヨークのマンハッタンにインスパイアされた、格子柄のトレンチコートにニューヨークの摩天楼がプリントされたアイテムや、ニューヨーク近代美術館(MoMA)から盗んできたかのような名作アートをプリントしたアイテムが人気を博し、近年ストリートでの存在感を大きくしています。
出典:rakuten
また、アウェイクは元シュプリームが手がけているだけあってブランドコラボにも積極的。
アシックスやリーボック、モンクレール、ガールズドントクライなどとのコラボレーションは、各地で即完売を連発しています。
■ブレンドン・バベンジンのNOAH NYC
出典:highsnobiety
・シュプリーム時代の役職:デザインディレクター/クリエイティブディレクター
ブレンドン・バベンジン(Brendon Babenzie)は、創業者のジェームズ・ジェビアを除くとシュプリームで最も古株だった人物。
1996年にプロダクト開発・デザイナーとしてシュプリームに入社し、2002 年にノアを立ち上げるためにシュプリームを退社。
しかし、これがうまくいかずブランドをたたむと、2006年にシュプリームに再度参画。
2006年から2015年にかけて、シュプリームのディレクターとしてブランドを大きく盛り上げました。
そんなバベンジンは2015年にシュプリームに別れを告げると、インテリアデザインを手がける妻と共に、サステナビリティの要素を加えたノア(NOAH NYC)を復活。
出典:brandbuyers
サステナビリティとは直訳で「持続可能性」。
自然環境や人間社会などが長期にわたって機能やシステムを失わずに良好な状態を維持させようとする考え方を指します。
服の過剰包装による環境問題や、縫製工場の低賃金労働に声を上げるノアは、近年世界各国が優先して取り組むサステナビリティを追求するファッションブランドとして注目を集めています。
ストリートファッションであると同時に上品なメンズウェアとしてのシルエットも保っているノアは、シュプリームを卒業したオトナ男子にもオススメなブランドです。
■マックス・ヴァンダーウッド・グロスのPROPER GANG
出典:mastered
・シュプリーム時代の役職:デザインディレクター
2015年、シュプリームを卒業しノアを復活させたブレンドン・バベンジンの後任としてシュプリームのデザインディレクターの座を射止めたのはマックス・ヴァンダーウッド・グロス(Max Vanderwoude Gross)。
彼はシュプリームで活躍する傍ら、2012年から2017年にかけて自身のブランドであるプロパー ギャング(Proper Gang)を運営
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ブランド名の由来はマックス自身が問題児だった過去のあだ名。
シュプリーム同様に古今東西の様々なアーティストからインスパイアを受け、それをパステルカラーや原色を上品に使って落とし込んだデザインが魅力でした。
現在は残念ながら休止中ですが、いつの日か復活してくれるのを祈るばかりです。
■ルーク・メイヤーのOAMC
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・シュプリーム時代の役職:ヘッドデザイナー
1990年代後半にシュプリームに参画したルーク・メイヤー(Luke Meier)は、ブレンドン・バベンジン同様にかなりの古株メンバー。
2004年よりヘッドデザイナーに昇格し、2010年まで同職を担当。
シュプリームを退職後は2014年より自身のブランドOAMC(オーエーエムシー)を手掛けています。
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OAMCはシュプリーム培ったストリートスタイルを日本やイタリアで作られる最高品質の生地と組み合わせ、モダンでラグジュアリーなウェアを展開。
ストリートファッションにありがちなビビッドな色使いやピーキーな柄を封印し、ベージュやグレー、カーキといった落ち着いた色合いで展開されるコレクションには、ストリートファッションで生まれがちな「子供っぽさ」は皆無だと言えるでしょう。
■ルーク・メイヤーのJIL SANDER
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・シュプリーム時代の役職:ヘッドデザイナー
OAMCを手掛けるルーク・メイヤーは現在のジルサンダー(JIL SANDER)も担当。
妻でありDiorのヘッドデザイナーをも務めたルーシー・メイヤー(Lucie Meier)と共に、2017年からこの世界的なファッションブランドのクリエイティブディレクターを務めています。
かつてドイツ出身のジル・サンダー氏によって1968年に立ち上がった本ブランド。
ドイツらしい質実剛健な物作りをミニマルなデザインに落とし込んだジルサンダーは、1985年のミラノコレクションをきっかけに大ブレイク。
しかし、1999年にはプラダグループがジル・サンダーの株式を75%取得し系列企業化すると、素材のコストバランスやシルエットに関する意見の対立から、ジル氏は自身の名を冠しらブランドから退いてしまいます。
出典:jilsander
以降、ジル氏の再起用やラフ・シモンズによるディレクションがあったものの、今のルーク/ルーシー体制のジルサンダーが最も成功していると言っても良いでしょう。
ルークのストリートファッションへの深い造形とルーシーのラグジュアリーブランドへの知見。
そしてブランドの原点とも言える素材にこだわった質実剛健な物作りが絶妙に合わさった現在のジルサンダーは、ファッショニスタの間からも高い評価を集めています。
■豆知識:ジル・サンダー氏のその後
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プラダグループと意見が対立し、自身のブランドから身を引くほど、苛烈な品質へのこだわりで知られるジル・サンダー氏。
今後の去就が注目を集めていたジル氏でしたが、なんと2009年3月にユニクロと提携し「+Jコレクション」を開催。
出典:uniqlo
「あのジル・サンダー氏がユニクロの物作りを認めた」と話題になり、コレクションは業界内に強烈なインパクトを残しました。
以降「ユニクロ=オシャレ」という価値観が一般に定着したほか、味を占めたユニクロが他の有名ブランドとの積極的なコラボを毎年発表するきっかけとなりました。
■さいごに
シュプリームはわずか30年にも満たない歴史の中で、様々なスタイルのブランドを手掛けるデザイナーを数多く輩出。
一般的なストリートファッションブランドと一線を画すシュプリームの深い魅力は、こうしたシュプリームにゆかりのあるメンバーの現在のクリエイションを見ることでも伺い知ることが出来ると言えるでしょう。
FashionArchive.comではどこよりも詳しいシュプリーム関連の情報を発信中。
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