ストリートファッションの王者、シュプリーム(Supreme)。
毎週ドロップされる新アイテムには多くのファンが群がり、あっと驚くようなコラボレーションやハイプなアイテムに人々は魅了され続けています。
そんなシュプリームがスタートしたのは1994年。立ち上げ当初は当然今のような大人気ブランドではなく、ニューヨークの片隅に居を構える小さなスケートショップでした。
しかし、創世記とも言えるこの時期に作られたアイテムデザインやブランドの精神は、今のシュプリームにも脈々と受け継がれています。
今回の記事では、そんなシュプリームの立ち上げ初期にフォーカス。
シュプリームの創業者であるジェームズ・ジェビアの来歴と共に、大人気ストリートブランドの歴史をご紹介致します!
■ジェームズ・ジェビアがストリートの重鎮となるまで
出典:footwearnews
シュプリームの創設者、ジェームズ・ジェビア(James Jebbia)。
ジェビアは1963年7月22日にニューヨークのマンハッタンで誕生。
しかし、生まれて間もない1歳から19歳までをイギリスのウェストサセックスのクローリーで過ごします。
イギリス公共放送BBCで放映されていた学園ドラマ「グランジヒル(Grange Hill.)」での子役出演などをこなすもその後は目立った役者活動をせず、電池メーカー「デュラセル(DURACELL)」のライン工などを経験。
19歳で出生の地ニューヨークに戻ったジェビアは、ソーホーにある高級セレクトショップ「パラシュート」で勤務を開始します。
※ソーホーの街並み 現在も数多くのアパレルショップが居を構える
パラシュートでの勤務の傍ら、近くのウースターストリートでのフリーマーケットで自身が厳選したアイテムを販売する楽しさをしったジェームズ・ジェビア。
1989年には当時のガールフレンド、メアリー・アン・ファスコやパラシュートの別店舗のマネージャー、エディ・クルーズと共にセレクトショップ「ユニオン(UNION)」をオープンします。
ニューヨークや東京生まれの新進気鋭のブランドを確かな審美眼でセレクトし販売していたユニオンは大人気ショップに成長。
しかし同年、ユニオン運営の傍らジェビアはその後のキャリアを左右することとなる大きな出会い、ショーン・ステューシーと邂逅を果たします。
西海岸でスケーター/サーフブランドの雄「ステューシー(STUSSY)」を成功させていたショーン・ステューシー。
東海岸、すなわちニューヨークでもステューシーのショップを建てようと考えたショーン・ステューシーは、ジェームズ・ジェビアとタッグを結成。
ジェビアは1991年にスプリングストリートにSTUSSY NYCをオープンし、東海岸のストリートシーンにおけるジェビアの存在感はますます大きくなりました。
そんな中、ジェビアにとって新たな目標となったのは自分でスケートショップを立ち上げるというものでした。
■シュプリームの誕生
1994年、スケーターのためのショップとしてオープンしたシュプリームは店舗というより「溜まり場」といった雰囲気に。
大音量の店内音楽や店頭でムービーを流しっぱなしにすることで通行人の目を引くやり方は現在のシュプリームの店舗にも受け継がれているお店のスタイル。
出典:sonar.tokyo
店にたむろするスケーターたちは近くのスペースでトリックを披露したり、店でセレクトされたZoo YorkやShorty’sといったスケーターブランドを試したりしていました。
オープン当初のシュプリームの商品のほとんどが他ブランドから卸したセレクトアイテムだった中、最初のオリジナルアイテムとしてリリースされたのは3種類のTシャツ。
映画「タクシードライバー」のロバート・デニーロにフィーチャーしたもの、アフロヘアのスケーターが描かれたもの、そしてシュプリームのボックスロゴがプリントされたアイテムのみでした。
それぞれ60着ずつしか作られなかったようです。
■過激なマーケティングで有名に
シュプリームを無事立ち上げたジェビアは店舗のプロモーションにあたり妙案を思いつきます。
スタッフのフランク・フェルナンデス(Frank “POOKY” Fernandez)にシュプリームのロゴを19×6cmサイズにしたステッカーを1万枚渡した彼は、「これをNYじゅうに貼りまくれ」と指示。
赤く視認性抜群のボックスロゴステッカーはゲリラ的に様々な箇所に貼られ、街中の壁や手すりはもちろんのこと、カルバンクライン(Calvin Klein)のモノクロポスターなどにも貼られ、ニューヨークタイムズで取り上げられるほどの話題を集めます。
出典:supremania
ちなみにジェビアがユニオン時代にアイテムを取り扱っていた現代アーティストのカウズ(KAWS)もこうしたアナーキーな宣伝手法を取り入れる人物。
出典:aliasdg
広告(アドバタイジング)に自身のアートを付け加えることで意味を変えるサブバータイジングと呼ばれるこの手法は、同じくニューヨークで活動していたカウズからインスピレーションを得たのかもしれません。
また、初期のシュプリームを語る上で欠かせないのが映画のワンシーンやCDジャケット、コミックス、はては他ブランドなどから無断でアートワークを借用してTシャツにプリントしたアイテムたち。
中でもこちらのコカコーラやグッチ、バーバリー、そしてルイヴィトンといったブランドデザインを勝手に流用した“オリジナルアイテム”たちの怖いもの知らずさには驚かされます。
こうした行為にブランド側が黙っているはずもなく、ルイヴィトンなどは知的財産権の侵害として即座に中止を勧告する書簡を送付。
商品を燃やすことを指示されたシュプリームはコレクションの販売を取りやめましたが、何人かのクルーたちはこれらの「ルイヴィトン×シュプリーム」のアイテム燃やさずにこっそり保管。
現在でも時折オークションなどに出品され、高値で取引がなされています。
■さいごに
今回の記事では、シュプリームの創業者、ジェームズ・ジェビアにフォーカスし、ブランド立ち上げ初期の歴史を振り返ってみました。
ストリート/スケーターカルチャーの延長線上にあるブランドゆえか、過激なアイテム作りやプロモーションも厭わないスタイルだったシュプリーム。
今日においてもシュプリームが根強い人気を誇る理由の一つには、ジェビアのこうしたアナーキーな精神性がアイテムから感じられるからかもしれません。
FashionArchive.comでは他にもシュプリームの歴史やデザイナーの来歴、おすすめアイテムなどの紹介を多数発信中。
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