今でこそ当たり前となった、ファッション業界の「コラボレーション」。
しかし、コラボ文化が根付いたのはファッションの歴史から考えると実はごく最近。
1990年代の日本で華開いた裏原宿トレンドから生まれたコラボレーション。
その後ナイキやアディダスといったスニーカー業界を中心に他ブランドとのコラボ文化はラグジュアリー業界にまで発展。
そして2017年のシュプリーム×ルイヴィトンのコラボで大爆発したのです。
しかし、これまでファストファッションブランドとストリートブランドのコラボであったり、スポーツブランドとラグジュアリーブランドのコラボであったりといった、ブランド同士のコラボが通常だったファッション界に近年変化が起きています。
なんと国内のブランドはもちろんのこと、海外の名のあるブランドが次々と日本の漫画やアニメとのコラボレーションを発表。
これまでのアニメや漫画のアパレル商品といえば、せいぜいファストファッションブランドがお粗末なデザインで販売するか、アニメや漫画の版元がペラペラな生地で作ったクオリティの低いTシャツが関の山でした。
しかし近年、特に2022年を振り返ると、グッチやドルチェ&ガッパーナといった格式のあるブランドまでもがアニメ・漫画コラボを次々発表し話題を集めました。
今回の記事ではそんなアニメや漫画のコラボプロダクトをご紹介。
合わせて何故こうしたコラボレーションが急に増えたのか、3つの理由を考察します。
-
目次
- ■アニメ/漫画コラボ①:GUCCI × ドラえもん
- ■アニメ/漫画コラボ②:LOEWE × となりのトトロ、千と千尋の神隠し、ハウルの動く城
- ■アニメ/漫画コラボ③:Dolce&Gabbana × 呪術廻戦
- ■アニメ/漫画コラボ④:Ground Y × 鬼滅の刃、チェンソーマン
- ■アニメ/漫画コラボ⑤:グッチ × ジョジョの奇妙な冒険
- ■アニメ/漫画コラボが増えた理由①:クランチロールで日本のアニメが世界で売れた
- ■アニメ/漫画コラボが増えた理由②:Y2Kファッションとの相性の良さ
- ■アニメ/漫画コラボが増えた理由③:ユーザーがブランド同士のコラボに飽きた
- ■さいごに
■アニメ/漫画コラボ①:GUCCI × ドラえもん
出典:gqjapan
2021年に創設100周年を迎えた名門ブランド、グッチ(GUCCI)。
アレッサンドロ・ミケーレの華麗なクリエイションで大人気ブランドとして復活した同ブランドは、100周年を迎えるや否や、日本の名作漫画「ドラえもん」とのコラボを発表し世間を驚かせました。
出典:gqjapan
往年の藤子・F・不二雄のタッチで書かれたドラえもんがグッチのロゴと一緒にプリントされている強烈な違和感!(良い意味です)。
セーターやフーディー、ウォレットやシューズまで多くのアイテムがリリースされた本コラボは、ハイブランド×アニメ・漫画コラボのブーム火付け役となりました。
■アニメ/漫画コラボ②:LOEWE × となりのトトロ、千と千尋の神隠し、ハウルの動く城
出典:precious
ジョナサン・アンダーソンによって職人ブランドから大人気ラグジュアリーブランドに昇華したロエベ(LOEWE)。
なんとスタジオジブリと2度に渡ってカプセルコレクションを立て続けに発表しています。
第一弾ではとなりのトトロとコラボし、まっくろくろすけやトトロのグッズをリリース。
第二弾ではアカデミー賞も取った名作、千と千尋の神隠しとコラボレーションが話題を集めました。
出典:elle
また、コラボを記念して作られた特別なアニメーションも登場。
秘密の花園を抜け、LOEWEと書かれた提灯の下を通り、形代に導かれるようにして油屋の前までたどり着く美麗なアニメーションは公式サイトで見ることができます。
そして、ラストコレクションとなる第三弾ではロエベ×ハウルの動く城を発表。
2023年2月2日からハウル、ソフィー、カルシファー、荒地の魔女といったキャラクターをフィーチャーしたアイテムがリリース。
出典:loewe
■アニメ/漫画コラボ③:Dolce&Gabbana × 呪術廻戦
出典:fashionsnap
2022年最もアニメファンを驚かせたコラボが呪術廻戦とドルチェ&ガッバーナ(Dolce&Gabbana)のコラボレーション。
呪術廻戦はスタジオジブリやドラえもんのような「時代を超えて愛される名作」、というよりは「今来ている大人気漫画・アニメ」といった印象が強い作品。
こうしたコンテンツはこれまでファストファッションやアニメイトなどで消費されることはありましたが、ドルガバのようなハイブランドが目をつけた例はなかなかありません。
また、キャラクターの立ち絵をTシャツにしたり、作中の名言をプリントするようなダサ…従来のアニメコラボとは異なり、ドルチェ&ガッバーナは呪術廻戦のキャラのイメージやモチーフを元にオリジナルなアイテムを作っていたのが驚き。
出典:uptodate
虎杖悠仁が身体に宿す両面宿儺を模した紋様や、釘崎野薔薇をイメージした薔薇のモチーフ。
こうしたデザインはブランド側が漫画・アニメコンテンツに対し真剣に向き合っているイメージを与えたと言えるでしょう。
■アニメ/漫画コラボ④:Ground Y × 鬼滅の刃、チェンソーマン
ヨウジヤマモト社のフィルターを通しファッションの新たな可能性を提案するブランドGround Y(グラウンドY) は、2022年に週刊少年ジャンプの「鬼滅の刃」や「チェンソーマン」とコラボ。
鬼滅コラボでは映画をきっかけに大人気キャラとなった煉獄杏寿郎をプリントしたカットソーやパーカーをリリース。
出典:yuya-do
また、2022年秋のアニメ放送に合わせてGround Yはチェンソーマンともコラボ。
チェンソーマンで登場する「公安」のスーツスタイルを第7話のエンディングテーマを担当したanoが着用。
チェンソーマンのキャラをイメージしたアクセサリーやコート、Tシャツなどがリリースされました。
■アニメ/漫画コラボ⑤:グッチ × ジョジョの奇妙な冒険
出典:blog.excite
2021年にドラえもんとコラボし世間を驚かせたグッチ(GUCCI)。
実はアイテムは出さないものの10年前からあの「ジョジョ」とコラボしていたことはご存知でしょうか。
1987年の連載開始以来、独特なタッチと世界観で人々を魅了してきた「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズ。
「第○部」という形で主人公を変えながら以降長らく続いてきたジョジョシリーズですが、2011年に第7部である「スティール・ボール・ラン」が完結し、同年に第8部「ジョジョリオン」がスタートします。
2011年といえば、グッチが90周年を迎えた年。
「ジョジョ」シリーズの作者・荒木飛呂彦は第4部の人気キャラクター、岸辺露伴がグッチのバッグを巡って隠された秘密を解き明かす短編「岸辺露伴 グッチへ行く」を発表。
原画が展示されたグッチ新宿は20日間で22,000名以上の来場を記録しました。
出典:aucview
2013年には第6部の主人公、空条徐倫にフォーカスした「徐倫、GUCCIで飛ぶ」を発表。
同作にはグッチに身を包んだ徐倫や、第5部のブローノ・ブチャラティ、レオーネ・アバッキオなどが登場。
世界中のグッチ直営店でコラボレーションウィンドウとして展示されていました。
出典:natalie
■アニメ/漫画コラボが増えた理由①:クランチロールで日本のアニメが世界で売れた
出典:comemo
日本におけるアニメ市場は基本的に春・夏・秋・冬それぞれのクールごとに20-30本程度のアニメが放映され、ネットフリックスやAmazon prime、U-NEXTといったサブスク型の動画配信サービスでコンテンツが配信されます。
しかし、アメリカや欧州でのアニメ視聴は、圧倒的に「クランチロール(Crunchyroll)」が担っていることを日本人はあまり知りません。
クランチロールはかつて海外のアニメファンが日本のアニメを違法視聴するために使っていたサイト。フォーラムやチャットが併設されていたことからアニメファンが集う場所としても成長を遂げていたサービスです。
出典:play.google
しかし、2008年には日本法人を立ち上げ、版元との交渉を開始。
違法動画を削除し、アニメ会社と締結することで、公式かつ高画質なサービス提供を可能にし、ますます広がりました。
それに目をつけたソニーは2017年、クランチロールと競合のアニメ視聴サービスだったファニメーション(Funimation)を買収。
2020年にはクランチロールも買収し、ファニメーションと統合したのです。
こうして「アニメ」というジャンルではネットフリックスやAmazonすらも超え圧倒的なユーザー数を誇ることとなったクランチロールのユーザーは1億人を超え、有料会員数も2022年末の時点で1,000万人に迫る勢いとなっています。
こうしたファンはクランチロールを通じて日本のアニメコンテンツを日々摂取。
世界各地でアニメEXPOが開催され、大盛況となっています。
こうした状況に目をつけたのが直近のハイブランド。
世界中の熱狂的なアニメファンは、良質なアニメグッズに飢えており、上記で紹介したコラボレーションアイテムも、作品を作り出した日本ではなく、世界のファンに向けて作られたコラボレーションだと言えるでしょう。
■アニメ/漫画コラボが増えた理由②:Y2Kファッションとの相性の良さ
出典:elle
2022年のファッショントレンドの大きなキーワード「Y2Kファッション」。
Year 2000の略である”Y2K”はその名の通り2000年代に流行ったファッションスタイルです。
出典:spur
ピチッとしたスタイルや厚底ブーツ、ミニ丈のトップスやショートパンツ。
そして何よりケミカルでカラフルな色使いが特徴だったY2Kファッションは2022年に人気が復活し、当時を知らない世界中の女子を魅了しました。
こうしたファッションと相性が良かったのが、その特性ゆえ派手な色使いになりがちなアニメ・漫画コラボ。
各ブランドがY2Kをどう表現するかが問われた2022年において、アニメや漫画にフォーカスを当てたブランドが同時多発的に発生したのかもしれません。
■アニメ/漫画コラボが増えた理由③:ユーザーがブランド同士のコラボに飽きた
出典:uptodate
2010年代以降、ストリートファッションやスニーカートレンドの台頭から猫も杓子もコラボレーションまみれとなっていたファッション業界。
フリマサイトやリセールマーケットが世界的に広く使われるようになったことも起因し、転売ヤーが名のあるブランド同士のコラボレーションアイテムを高額で出品するケースも数多く見受けられました。
こうしたコラボアイテムの高額転売は各ブランドの価値を上げることとなり、表立っては表明しないもののどのブランドも歓迎していたと言えるでしょう。
しかし、2020年代に入るとユーザーは増えすぎたコラボレーションに食傷気味になり、相当のビッグコラボでなければ以前ほど盛り上がることが少なくなりました。
しかし、この状況に困ったのがこれまで人気の起爆剤をコラボで賄っていた各ブランドたち。
今更コラボレーションをすっぱり辞めてインラインモデルだけにしても、新鮮さや面白みをユーザーに感じてもらうには時間がかかってしまうことが懸念されます。
そこで考えたのが、ブランドではなくアニメ/漫画作品とのコラボレーション。
これまでハイブランドの客層とは全く違う「オタク層」をターゲットに良質なデザインのアパレルアイテムを提供すべく、各社がいっせいにアニメ/漫画コラボを打ち出したのではないでしょうか。
出典:lifeonline
また、そもそもコラボレーション文化は裏原宿を起点とするストリートファッションの文脈から出てきた文化です。
そんな中、例えばストリートブランドの雄シュプリームは、はるか昔からサブカルチャーにスポットを当てたアイテムを毎シーズン出してきたブランド。
「コラボレーション」という文化を吸収したハイブランドは、次にアニメ/漫画をはじめとする「サブカルチャーとの融合」に目をつけたのかもしれません。
■さいごに
今回の記事では、特に2020年以降増えているアニメ/漫画とハイブランドのコラボレーションについて考察をしました。
ファッションブランド同士のコラボレーションがあまりにも多すぎる昨今、新たな起爆剤として今後も漫画やアニメにフィーチャーしたブランドコラボが増えていく可能性は十分にあります。
アニメや漫画作品に敬意をもちつつ、良質な素材とトレンドを意識したデザインを兼ね備えたコラボアイテムが出てくることは、双方の業界にとってプラスとなることは間違い無いでしょう。