2019年ごろから人気にジワジワと火がつき、今まさに人気絶頂期を迎えているナイキのスニーカーモデル「ダンク(DUNK)」。
出すモデルは軒並み即完売を繰り返し、そのうちの多くは定価+10,000円以上、モデルによっては50,000円以上の高値でリセールマーケットに出回っています。
今回の記事では、そんなダンクの歴史や人気の理由、そしてチェックしておきたいオススメモデルなどをご紹介致します。
■ダンクの歴史
・ダンクの始まり
ダンクについて語るには、まず「ターミネーター」について触れておかなければならないでしょう。
1980年代、バッシュ(バスケットボールシューズ)に力を入れていたナイキは、NBAや大学バスケットボールチームとの提携を数多く進めます。
バスケットボール強豪校だったジョージタウン大学からチーム用のバッシュの開発を求められたナイキは、同大学のチームカラーであるグレーとネイビーブルーでまとめたハイカットのバッシュ「ターミネーター」をリリースしました。
当時のアメリカにおける大学バスケットボールといえばNBAに勝るとも劣らない人気を誇り、特に3月の全米大学体育協会(NCAA)主催のトーナメントは「マーチマッドネス(3月の狂乱)」の名で知られる白熱ぶり。
ターミネーターの人気から、大学×バッシュの可能性に気がついたナイキは、1985年、満を辞してダンクをリリースします。
バスケットボール強豪校とコラボレーションし、全部で7種の大学×ダンクを同時リリースしました(+ターミネーター×ジョージタウン大学の再版を加え、計8種を一挙展開、大学数は基本1校×1足だが、ホワイト×レッドが3大学合同、ブラック×イエローが2大学合同)。
以下がその大学×ナイキの全8種のバッシュです。
- 最上段左:セントジョンズ大学、ノースカロライナ州立大学、メリーランド大学
- 最上段右:アリゾナ大学
- 2段目左:ミシガン大学
- 2段目右:シラキュース大学
- 3段目左:ネバダラスベガス大学
- 3段目右:ケンタッキー大学
- 4段目左:アイオワ大学、パデュー大学
- 4段目右:ジョージタウン大学(ターミネーター)
発売当時は大きな人気を呼ぶことはなかったものの、エアフォースワンをはじめとする白を基調としたモデルばかりだったバッシュ界に、カラフルなダンクたちは一石を投じることになり、同時期にリリースされた名作バッシュ「エアジョーダン1」とともに、その後のバッシュのトレンドを一変させました。
また、ワゴンセール行きとなった格安ダンクを買い求めたのがスケーターたち。
激しい足の動きによってスニーカーが消耗品となっている彼らにとって、カラフルで履き心地の良いダンクは最適だったのです。
このスケーターとの邂逅は、のちのダンクの歴史にとっても重要な意味をもちました。
1987年ごろまで継続販売されたこれらのダンクは、情報は少ないものの同色のローカットバージョンも合わせて販売されて居たようです。
・ダンクの復刻
伝説のブランド「フラグメントデザイン」やDJ活動などで知られるストリート界のカリスマ、藤原ヒロシ。
出典:gqjapan
彼とナイキの出会いは1997年まで遡ります。
ナイキから「どんなことがしたいか」を尋ねられた藤原は「ダンクを復刻したい」と言いますが、当時復刻という概念を持ち合わせて居なかったナイキからはすげなく断られます。
しかし、藤原ヒロシとのコミュニケーションにインスパイアされたのかは定かではありませんが、1999年には、ナイキが日本主導でダンクを復刻。
カレッジカラーでまとめたハイカットの復刻や、アッパーの色を反転させた通称「裏ダンク」などを全18種リリースしました。
出典:atmos-tokyo
・スケボー文化との融合、そしてNIKE SBの登場
「裏ダンク」を含む全18種がリリースされた1999年の12月にはシュータンを分厚くしたローカットのダンク「NIKE DUNK LOW PRO」がリリース。
出典:atmos-tokyo
2002年、には上記のLOW PROのシュータンの厚いモデルを踏襲したスケーター向けブランドNIKE SBがスタート。
日本で発売された最初のSBダンクは、なんとシュプリームとナイキのコラボレーションモデルでした。
歴代のシュプリームとナイキのコラボスニーカーについてはこちらの記事で紹介しております。
・NIKE SBの躍進とダンク熱の沸騰
2002年9月に日本で初めてナイキSBのダンク(シュプリーム×ナイキSBのコラボダンク)がリリースされる少し前、ナイキSBはダンク人気を不動のものとすべく、次々とニューモデルのダンクを米国市場に投下していました。
中でも、コアなスケーターファンに向けてジーノ・イアヌッチ、リース・フォーブス、ダニースパシリラット、リチャード・マルダーなどの人気プロスケーターとコラボしたモデル「Colors By」シリーズは大きな人気と注目を集めました。
出典:nikesb
Colors Byシリーズを終えると今度はスケートボードブランドとのコラボレーションを即座に開始。
2002年6月にリリースされたZoo Yorkとのコラボダンクでは、史上初めてダンクに直接プリントするオリジナルグラフィックが登場。
以降のダンクのデザインの幅を大きく広げた歴史的なモデルとなりました。
出典:nikesb
その後も2002年12月にはデニム生地のSBダンク「REESE DENIM」が登場。
出典:stockx
2003年8月にはシュプリームとナイキSBの第二弾コラボとしてハイカットモデルをリリースするなど、徹底的にキャッチーなモデルの連発を続けました。
出典:sneakernews
2004年から2005年にかけては「White Dunk」と銘打った展示イベントをフランス、東京、ロンドン、ニューヨークで開催。
それぞれの展示イベントでリリースされた限定ダンクはどれもその後値段が高騰。
特に、現在100万円を超えるリセール価格が有名なパリダンクや、ニューヨーク向けのイベントに間に合わず後日リリースされ発売時に暴動まで起こったピジョンダンクなどは今日でも有名です。
出典:nike
■ダンクはいま何故人気なのか? そしてダンク人気は続くのか?
・人気の理由は過去のサイクルと単純接触効果
過去の人気が再燃し、今最盛期を迎えているといっても過言ではないダンクですが、人気の理由はどこにあるのでしょうか。
一つは過去のスニーカーの人気サイクルの踏襲があると言えるでしょう。
史上初のエア搭載バッシュとして1979年にリリースされたエアフォース1は、その圧倒的な履き心地と形の美しさから人気が殺到、次に1985年、マイケル・ジョーダンの鮮烈なデビューとともに人気を博したエアジョーダンシリーズ、そして1990年代はエアマックスが人気を博しました。
90年代末には、先程の章で紹介した通りダンクが復刻。
「裏ダンク」の存在や「シティアタック」と呼ばれた地域限定のゲリラ販売などの、今日のストリートカルチャーを先取りするような売り方も功を奏し、大きな注目と人気を集めました。
こうした人気は近年同じような流れで復活していることに気が付きましたでしょうか。
2017年ごろのエアマックス人気、18年、19年のエアフォース1人気や、10年代後半を通して人気が続くエアジョーダンの人気はまさしく過去の人気サイクルの再来のように思えます。
そして、2019年ごろからジワジワと人気を博し始めたダンクが、今絶頂を迎えているのです。
また、こうした人気を後押ししているのはナイキの戦略によるものも大きいでしょう。
エアフォース1人気が絶頂期だった2019年は、シンプルな白のエアフォース1の生産数をあえて絞り販売個数制限を設け、同時に数多くの新色やコラボモデルをリリースしました。
同じ形で、2020年ダンクの人気がいよいよ本格的になると、ナイキはNIKE BY YOUでの限定的なカスタム可能ダンクのリリースや、カレッジカラーを含む各モデルの復刻や新色のリリースなどを立て続けに実施。
こうしたナイキの販売戦略はマーケティング用語で「単純接触効果」と呼ばれています。
例えばユニクロが毎週欠かさず新聞の中にチラシを挟んだり、ナイキが毎週のようにダンクの新作を投入したりすることで、同アイテムやブランドへの接触機会が増えたユーザーは、半ば強制的に興味関心を著しく高められます。
この記事を書いているのは2021年4月ですが、気になった方は改めて同月リリースされたダンクの数をチェックしてみると良いでしょう。
その過剰とも言えるリリース数に驚くことは間違いありません。
・ダンクの人気は今後も続くのか
出典:sneakernews
では、このダンク人気は今後未来永劫続いてゆくのでしょうか?
これまでの歴史を振り返れば、答えはNoであることは間違いありません。
近い将来、ダンクの人気は落ち着きを見せることになるでしょう。
しかし、これはダンクの人気が「無くなる」という意味ではありません。
現在のエアジョーダンやエアフォース1と同様程度の新作リリースに数が抑えられ、今ほどの熱狂的な争奪戦ではなくなる、というレベルに落ち着くのだと考えられます。
また、エアフォース1やエアマックスの新作はアトモスやABCマートの店頭に並ぶのに対し、エアジョーダン1のハイカットモデルなどは引き続き抽選販売がメインとなっていることから、ダンクも同様に人気の高いローカットモデルなどは今後も抽選販売でしか売られないよう、ナイキが供給をコントロールしそうです。
そして、ダンクの今後について問われたアトモス(atmos)の本明秀文代表は、ダンクの人気の終焉がスニーカー人気の落ち着きにつながると語ります。
これは、先ほど述べたナイキのスニーカーの人気サイクルの歴史に照らし合わせた発言であることは間違いありません。
過去、ダンクの人気の終焉以降、ダンクに続く次なる人気モデルの登場は長らくなかったことから、スニーカーは冬の時代を迎えました。
現在もエアフォース1やエアジョーダンの人気に続く形でダンクが大きなトレンドとなっていることから、このダンク人気の終焉がスニーカー業界のバブル崩壊につながる未来となる可能性は否定できないでしょう。
■おすすめダンク5選
ここからは、そんなダンクの中でもオススメモデルを5つご紹介致します。
どれもある程度のプレミア化はしているものの、リセールマーケットでの入手が比較的容易なものばかりです。
・SB ダンク LOW プロPanda Pigeon
出典:nike
ダンクの人気復活はまさしく本モデルのリリースから始まったと言っても過言ではないでしょう。
ニューヨークのデザインオフィス「STAPLE」を手がけるジェフ・ステイプルの提案したダンクに鳩の刺繍を入れたモデル「ピジョンダンク」は過去にその人気から発売日に集まったスニーカーヘッズが騒ぎを起こし、警察が出動したこともありました。
同日の出来事を記載した新聞記事をソール裏に落とし込み、白と黒でシックにまとめたこの「パンダピジョン」は、モノトーンのダンクをパンダの主食である笹の色にインスパイアされたライトグリーンでキリッと締めています。
・SB ダンク LOW プロ x グレイトフル・デッド
出典:nike
アメリカの伝説的なバンド、グレイトフル・デッドのキャラクター、マーチングベアにフィーチャーしたダンクが昨年リリースされました。
フワフワした起毛感やナイキのスウッシュをギザギザにした衝撃の見た目、シュータン部分の隠しポケットなどギミック多数の本モデルは履いているだけで気分が高まります。
本モデルはイエロー、グリーン、オレンジの3モデルがリリースされましたが、本ブログではグリーンを入手。
詳しくはこちらの記事でご覧ください。
・ダンク HIGH x アンブッシュ
出典:nike
ローカットモデルと比べ、バッシュ感が強いハイカットモデルのダンクを、アクセサリーで知られるアンブッシュが再構築。
バイカー文化を意識しスウッシュを巨大化し排気口のように取り付けた本モデルは唯一無二の存在感を誇っています。
白×黒のこのダンクが欲しくて、当時各ショップの抽選やSNKRSに張り付いていた方も多いはず。
なお、本品についても下記記事にて詳しく購入レビューを行なっております。
ぜひ合わせてご覧ください。
・ダンク SB LOW x Wasted Youth
出典:xbusa
Girls Don’t Cryで知られるグラフィックアーティストVERDYの手がける「Wasted Youth(ウェイステッド ユース)」とのコラボレーションダンクです。
レザーとデニム生地をパッチワークして作り上げたシックなダンクはギミック満載。
サイドのナイキのスウッシュロゴは切り離し可能な肉厚なものを外側に配し、内側にはチューリップからスウッシュが飛び出しているようなデザインのものをセット。
ヒール部分には金具のフックまで取り付けられています。
これだけデザインフルでありながら、黒色をメインに作られておりゴテゴテ感は皆無のこのダンク。
リセール市場では比較的落ち着いた値段感で取引されており、お買い得です。
・SB ダンク HIGH PRO SHARK x OSKI
スウェーデン出身のスケートボーダー、オスカー・ローゼンバーグとのコラボレーションによるダンクのハイカットモデルが2019年末にリリースされました。
スウェードレザーでシックにまとめたダンクのスウッシュはサメに形を変え、ナイキSBお得意の快適なクッショニングとスケートボーダーファッションにマッチするようなポップなデザインが人気を集めたアイテムです。
■さいごに
今回は2021年7月現在、スニーカー界1の存在感と人気を誇るナイキの名作モデル、ダンクにフォーカスしてご紹介致しました。
今後もダンクを含むナイキのスニーカー情報を当ブログでは定期的にアップしてゆきます。
ぜひご覧いただけましたら幸いです。