2022年末、年内のシュプリーム(Supreme)の販売が終わった頃に突然その改修が入りました。
シュプリームの公式サイトをチェックしていた海外メディアが、サイト内のソースコードに「Shopify」の文字が入っていることに気がついたのです。
毎週新商品が決まった時間にドロップされ、その度に多くのユーザーや自動購入Botが入り乱れるシュプリームの公式オンラインストア。
今回の記事では、世界でも有数のトラフィックを誇るこのサイトがリニューアルされる件について、Shopifyの法人向け営業経験を持つ筆者が解説します。
■シュプリームのサイトがリニューアル
2022年12月29日にシュプリーム2022年FWシーズンWeek18のアイテムリリースが終わると、オンラインストアはクローズ。
年末年始の休暇としてストアをクローズしたかに見えましたが、実際は大きな変化が起こっていました。
上記の画像の通り、サイトのドメインが旧来の「supremenewyork.com」から「supreme.com」に変更。
supremenewyork.comにアクセスしようとすると自動で新サイトにリダイレクトされるようになっています(日本国内向けは「https://jp.supreme.com/」に変更)。
また、開発者ツールを使って新サイトの裏側を覗いてみると、オンラインストアのプラットフォームに「Shopify」の文字が確認できます。
Shopify(ショピファイ)はカナダ発の大手ECツール。
その使い勝手の良さと拡張性から、世界中で現在導入が増えているツールです。
これはすなわちシュプリームがこれまでの公式オンラインストアを捨て、今後はShopifyを活用してオンラインストアを運営する意思があるということにほかなりません。
月間で200万回以上のアクセスが発生するシュプリームの公式サイト。
しかもそのアクセスは新商品が発売される木曜日(日本は土曜日)の午前11時前後に集中しています。
大抵の公式サイトは同時に数千のアクセスがあるだけでダウンする状況を踏まえると、1回の新商品リリースの際に数万、人気商品ならば数十万-数百万のアクセスが同時に発生するシュプリームのECサイトは並大抵の努力では運営できないでしょう。
では、勿論完璧では無いとはいえ、これまでユーザーやBotの大量アクセスに耐えてきたサイトを捨て、シュプリームはこのタイミングでShopifyに切り替えるのでしょうか。
そもそも、Shopifyとはどんなツールなのでしょうか?
■Shopify(ショピファイ)とはどんなツール?
Shopify(ショピファイ)はカナダ発のEC企業及びその主サービスたるECツール。
ツールの提供はもちろんのこと、ECストアの開設や、他のECプラットフォームからの移行支援を小規模なものも含めサポートしています。
その利便性の高さから年々シェアを広げており、電気自動車大手のテスラと並び、次のGAFAの一角を担う企業として注目を集めています。
Shopifyのサービスとしての大きな強みは低コストでスタートできる手軽さと、拡張性の高さ。
まず、Shopify費用はミニマムで約25ドル/月で、初期費用や販売手数料は0円。
なおかつ大量の注文を受けても落ちにくいECサイトのサーバーは自社で用意する必要がありません。
そして何よりのShopifyの強みはその圧倒的な拡張性。自分が求めるサイトの仕様に合わせて様々な機能の後付けを、さながらスマホにアプリをDLするような気安さで実装することが可能です。
例えば「公式サイトにインスタの投稿を掲載したい」「セット販売と割引機能を追加したい」「SNSアカウントでの会員登録をできるようにしたい」といった機能をサイト開設後に簡単に追加することが出来るのです。
■Shopify(ショピファイ)を導入したシュプリームで、Botはどうなる?!
シュプリームがShopifyの導入を決めたのは今から3年前。
しかし、世界最大のフラッシュマーケティングサイトであるシュプリームのサイト移行は並大抵のプロジェクトではなかったのでしょう。
しかも、2019年にシュプリームがShopify導入を決めてからコロナウイルスが世界に蔓延。
シュプリームの最も大きな消費国のひとつである日本では、先行き不安からか副業として転売ヤーを始める人が増加。
多くの新人転売ヤーたちがシュプリームに群がるようになり、トラフィック量やBotの数が激増したと言われています。
ShopifyはECサイトで「より商品を買ってもらうため」に様々なツールを提供している会社。
対してシュプリームは商品を買おうとする人が既に商品の数以上に群がっているため、いかにして適切なユーザーに商品を販売できるかが肝になります。
Shopifyお得意のカゴ落ち対策(カートに商品を入れた後、そのまま離脱してしまう人への対策)などは不要で、ユーザー目線から言えばBotや転売ヤーの対策を徹底してほしいところです。
Shopifyの元CTO(最高技術責任者)のJean-Michel Lemieux氏はTwitterで、シュプリームがShopifyを導入するまでに時間がかかったことやドメインの変更については言及。
しかし、多くのTwitterユーザーから寄せられた「Bot対策」については沈黙を貫いています。
■さいごに
今回の記事では、シュプリームがShopifyを導入しサイトをリニューアルした件について分析しました。
Shopifyバージョンのシュプリームは、2023年1月7日のシュプリーム2022FW Week19のリリースから変更。
おそらく2022FWシーズン最終週となるこの発売にてテスト運用をし、2023年SSシーズンでの本運用に備えるのでしょう。
今後もアップデートがあれば、随時情報を追記してゆきたいと思います。