1994年にニューヨークの片隅で小さなスケートボードショップとして始まったシュプリームは、現在世界のストリートファッションブランドの頂点として、若者を中心に絶大な人気を誇っています。
商品は毎週数量限定でドロップされ、そのほとんどは一度発売されたら再販はほぼ無いことから、発売日には各所で争奪戦が勃発。
高額転売も常態化しているのが現状です。
そんなブランドの特性上、血の気の多い「お客様」も多いシュプリームは、これまで数多くの事件の発端となってきました。
今回はそんなシュプリームの負の歴史の中から、近年海外で起こった象徴的な事件を4つご紹介してゆきます。
■2014年4月 シュプリーム×ナイキ エアフォームポジットワン発売に伴う暴動事件
2002年の初コラボ以来、毎年ナイキとのコラボレーションスニーカーをリリースしているシュプリーム。
2014年の1発目のコラボレーションはスーツケースを思わせる硬いアッパー素材が特徴のバスケットボールシューズ、エアフォームポジットワンのシュプリームバージョンが発表されました。
赤×金、黒×金の2色展開でリリースした本作は、そのゴージャスな見た目から多くのストリートキッズを引きつけ、各シュプリームの店舗の前には多くの人が行列を作りました。
なかでもニューヨーク、ソーホーのシュプリームの店舗周辺には前日から多くのファンがキャンプ用の椅子などを路上に置いて待機。
群衆は時間と共に歩道から溢れ、ついには車が通行できなくなるほどに膨れ上がりました。
事態を重く見たNYPD (ニューヨーク市警)は暴動鎮圧装備を纏った警官隊を出動。
上空にはヘリコプターまで飛ばす事態に発展しました。
結果、シュプリームは当日の発売を取りやめる声明を発表することとなりました。
■2017年8月 シュプリーム Kマート事件
2017年の夏にReddit (米国のSNS兼ニュースサイト)に投稿された1枚の写真は、アメリカ中のストリートキッズたちを最寄りのスーパーマーケットに走らせる事態に発展しました。
この投稿を行ったCokeSlurpees氏は、地元の大型スーパーマーケット「Kmart」で、シュプリームのタグが襟元についた無地のTシャツが1枚4ドルで売られていることを発見。
投稿を見た人がそれぞれ最寄りのKmartに急行すると、そこには確かに様々な色の無地Tシャツが、シュプリームのタグと共に安値でワゴンに山積みされていたのです。
この事態はあっという間に全米に知れ渡り、ニュースを知った人たちによってTシャツは直ちに買い占められました。
Kマート側もバックヤードにあった残りの在庫について、襟元のシュプリームのタグを全て切り取ったうえで店頭に並べたことで事態は沈静化しました。
この事件の背景には、シュプリームのアイテムの生産方法と、あるOEM会社の倒産が関係していました。
事件の詳細は以下の記事で詳しくご紹介しておりますので、あわせて是非ご覧ください。
■2018年9月 シュプリーム ロンドン店の看板強奪事件
2018年9月2日、イギリスにただ一つのシュプリーム店舗であるロンドン店にて、入り口の看板が何者かに強奪される事件が発生しました。
これに対し、ロンドン店マネージャーのダン・ジャガー(Dan Jagger)氏はシュプリームの公式インスタグラム上で犯人が看板を強奪する場面を映した防犯カメラ映像を公開。
なんと犯人を特定した情報提供者には報酬としてボックスロゴが施された好きな色のクルーネックが贈られることが発表されました。
なお、現時点で犯人が逮捕されたという情報は上がっていない他、2019年1月には再び別の人物がロンドン店の看板を強奪する様子が本人のYoutubeに掲載され、話題を呼びました。
■2018年12月 シュプリーム サムスンとの偽コラボレーション事件
2018年12月10日に中国で行われたサムスンのGalaxy A8s ローンチイベントの場で、サムスン中国のマーケティング責任者であるFeng En氏は突然、衝撃的なコラボレーションを発表しました。
En氏が「最近の若者は自身の独自性溢れたスタイルをアピールするために、Sで始まる2つのブランドを持っている…」と語りながら、SamsungとSupremeのロゴがスクリーンに映し出すと、会場はどよめきに包まれました。
しかし、ローンチイベントの様子がネット上に拡散されると、なんとシュプリーム公式が「コラボレーションは事実無根」と発表。
実はこのコラボレーションの実態は中国での店舗の立ち上げを計画していたシュプリームの模造品ブランド「シュプリームイタリア」が、サムスンと提携し専用製品を作成するべく行った発表だったことが明らかになったのです。
実はこのシュプリームイタリア、現在本物のシュプリームが展開するアメリカやイギリス、日本を除くいくつかの国で正式なブランドとして商標登録がなされており、その合法性を争い本家シュプリームと争った裁判では、最高裁判所で勝訴を勝ち取ってさえいます。
幸いなことにサムスンとのコラボレーションや中国での店舗立ち上げは現地のストリートキッズの猛反発もあり頓挫しましたが、現在でもシュプリームイタリアは、イタリアやスペインなどで正式な「シュプリーム」として法の基に認められてしまっている状況です。
こうしたシュプリームイタリアがいかにして法を逆手にとって模造品の販売を国に認めさせたのかは、下記の記事で詳しく解説しております。
是非、ご一読頂けましたら幸いです。