深掘り解説

シュプリームのダサすぎる「反戦」Tシャツとトランプ支持率低下の原因

2026年4月11日にシュプリーム(Supreme)が発売する新商品に、大きな注目が集まっています。

発売されるのは現在の情勢を象徴するかのような、「反戦」や「トランプ批判」をデザインに落とし込んだTシャツ類。

Supreme シュプリーム 政治批判 トランプ 反戦

現在のトランプ政権が引き起こしている軍事介入やその被害を踏まえると、シュプリームのこれらのTシャツは政権への批判を真っ当に行う素晴らしいアイテムだと捉える向きもあるでしょう。

しかし、私はそうは思いません。
なぜならシュプリームはその時の大統領によって「反戦」を口にするときとしないときがあるからです。

今回の記事ではシュプリームの政治的スタンスとその欺瞞、そして現在のアメリカ有権者が持つ絶望感について、米国在住経験を持ちシュプリームについて誰よりも詳しく解説してきた筆者の視点から考察します。

■シュプリームの政治的立ち位置は民主党支持

アメリカ 共和党 民主党

アメリカの企業は支持政党を明確に表明したり、政党や特定の議員に大規模な献金を行うことが少なくありません。
例えばナイキ(Nike)であれば創業者フィル・ナイトが熱心な共和党支持者ではあるものの、現在の献金は民主党75%、共和党25%と民主党支持に傾いています。

シュプリームは歴史的に民主党の地盤であるニューヨーク発祥のブランドということもあり、これまで一貫して民主党支持の立場をとってきました。
シュプリームが創業したのは1994年、時の大統領は民主党のクリントンでした。
その後アメリカでは

2001年:共和党ブッシュ政権
2009年:民主党オバマ政権
2017年:共和党トランプ政権(第一次)
2021年:民主党バイデン政権

そして2025年より共和党トランプ政権(第二次)と政権交代が繰り返されながら現在に至っています。
そんな中シュプリームは一貫して民主党の大統領を支持し、共和党の大統領を批判してきたブランド。

Supreme シュプリーム 政治批判 ブッシュ大統領 反戦 Fuck Bush

シュプリームが政治的なメッセージを出し始めたのはブッシュ政権から。
Fuck Bush と書かれたボックスロゴステッカーに始まり、彼が主導したイラク戦争を揶揄したTシャツなどを通じて共和党批判を行いました。

Supreme シュプリーム obama オバマ大統領 シャツ

2009年に民主党オバマ政権が誕生するとシュプリームはこれを喜び、退任後の2017年にはオバマの肖像をプリントしたシャツやパーカーをリリース。
彼の8年間の政権運営に称賛を送りつつ、間接的に後任であるトランプ政権を批判しました。


出典:x

2016年、共和党のドナルド・トランプと民主党のヒラリー・クリントンが争った大統領選挙では、シュプリームがインスタグラムを通じてトランプを徹底的に攻撃。

当時、シュプリームの公式アカウントでは

#imwithher(私はヒラリーと共にある)
#Fucktrump(トランプ糞食らえ)

とまで投稿し、モデルがシュプリームのアイテムを着用するLookBookの背景にまで「fuck Donald Trump」と書き記しました。


出典:x

そして、トランプ擁する共和党候補が勝利すると、「Say No Tee」と名付けられた反トランプのTシャツを製作。
その後も2018年にはトランプ前大統領が関係を持ったとされる19人の女性の顔の合成をした「18 & Stormy Tee」を発売するなど、反トランプを貫きました。

2020年、2期目を目指す現職のトランプと民主党のジョー・バイデンが争った選挙では、少し論調が弱まり、選挙直前に4度にわたってインスタグラム上で「VOTE(投票しよう)」と呼びかけるにとどまりました。

以降、バイデン政権誕生から第二次トランプ政権発足、そして現在に至るまで、シュプリームは6年にわたって政治的メッセージの発信を控えていましたが、2026年4月、ついにトランプ批判とも言えるアイテムを久々にリリース。

Supreme シュプリーム 政治批判 トランプ 反戦

ブッシュ政権時代のアンチ・ブッシュキャンペーンと同じく、第二次トランプ政権を戦争批判と絡めてTシャツに落とし込みました。

■日本人の誤解:アメリカの左派/リベラルは戦争反対ではない


出典:huffingtonpost

シュプリームがこれまでに行ってきた民主党支持&共和党批判について分析する前に、我々日本人が誤解しやすい点、すなわち日本とアメリカの右派/左派の違いについて解説します。

日本では左派・リベラルを標榜する政党や人々が「差別反対」や「弱者救済」と共に掲げる主張に「憲法九条を守り、戦争に反対する」というものがあります。

ゆえに、左派本人のみならず彼らとは政治的に反対の立場をとる人たちも「軍事的なものを忌み嫌うのが左派である」というイメージが染み付いています。

このイメージに引きずられ、日本の左派はアメリカの左派である民主党を支持し、逆に日本の右派はアメリカの右派である共和党を支持しがちであることは間違いないでしょう。

ただし、米国では共和党はもちろんのこと、民主党も戦争や軍事介入に反対する政党では決してありません


出典:arabnews

ネタニヤフの発言を信じ、有りもしない大量破壊兵器を探すべくイラク戦争を引き起こしたブッシュ政権は確かに右派である共和党でした。


出典:bbc

しかし、ブッシュ政権を「愚かな戦争(dump war)」と批判しながら、いざ政権の座につくと軍事介入の規模や頻度を拡大したのが左派である民主党オバマ政権。
就任からほとんど間をおかずにノーベル平和賞を受賞するほど「平和」を期待されていたオバマでしたが、リビア介入やアフガニスタンへの増兵、民間人犠牲者を大量に出すドローン空爆を愛し、パキスタン/ソマリア/イエメンなどに数百回にわたって空爆を行いました。


出典:diamond

2020年の選挙ではトランプに勝利したバイデンは、オバマ政権時代の副大統領。
彼は在任中に起きた2つの大きな戦争、すなわちイスラエル/パレスチナ戦争とロシア/ウクライナ戦争のどちらへも深く関わりました。


出典:wsj

一方のトランプは限定的な軍事力行使はあったものの、2016-20年の第一次政権においてはブッシュ、オバマ、バイデンと比較すると確かに「新たに戦争を引き起こさなかった大統領」となりました。

当時のトランプは共和党内においてもアウトサイダーであり、それまでの共和党の本流、特にブッシュ政権時に戦争を主導したネオコン層などからは同じ党でありながら忌み嫌われていました。
ある意味トランプ大統領は共和党のガワをかぶりつつも、それまでの共和党のスタンスとは全く異なる党に作り替えたと言っても良いでしょう。

■シュプリームは「反戦」ではなく「反共和党」

Supreme シュプリーム 2004FW Bomb Tee

これを踏まえて、シュプリームの政権に対するメッセージを改めて見てみましょう。
ブッシュ政権の批判においてシュプリームは、彼が起こしたイラク戦争批判を全面に出したアイテムをリリースしました。

しかし、2016年ごろにシュプリームがトランプ批判を行った際にその「ネタ」としたのは彼の人権意識の低さや女性スキャンダルであり、ブッシュ政権批判の際に行ったように戦争や軍事という切り口で攻めることができませんでした。


出典:hypebeast

また、2017年にリリースされたシュプリームの「Obama」コレクションでは、当然ながら彼の政権下で引き起こした軍事的なあれこれについては触れず、彼を称賛することで現政権であるトランプに間接的に中指を立てるようなアイテムとなっていました。

第一次トランプ政権が終わりバイデン政権の最中にロシア/ウクライナ戦争やイスラエル/パレスチナ戦争が起きるも、その間シュプリームは特段これを批判しませんでした。

そして再びトランプが政権を奪還すると、今回の2026年のTシャツコレクションにて満を辞してアンチ・トランプ的なアイテムをリリース。
アイテムを見れば分かる通り、今回のアイテムにおけるトランプを批判する理由が「軍事的なもの」であることは明らかです。


出典:dezeen

つまりシュプリームは共和党批判のネタとして「反戦」を利用しているだけで、それを行っているのが民主党であれば口をつぐんでいる。

私はシュプリームというブランドを心の底から愛していますが、「民主党の戦争は良い戦争、共和党の戦争は悪い戦争」とでも言わんばかりの「反戦」アイテムには全く魅力を感じません。

■トランプ勝利の要因は、そのままトランプへの失望の理由となった


出典:/brookings

2026年に入って以降、ベネズエラ、イランと次々に軍事介入を行う第二次トランプ政権に対し、批判の声が高まっています。
トランプを舌鋒鋭く批判する人々の中には、先の選挙では熱烈にトランプを支持していた人たちも数多く含まれており、彼らがトランプに大きく失望していることが伺えます。


出典:courrier

日本ではいわゆる「MAGA」と呼ばれる人々のイメージが先行し、トランプ支持者はみな陰謀論に騙されやすい、好戦的なレイシストだと考えている方々も多いのではないでしょうか?

しかし、先の選挙でトランプに票を投じた有権者全体のうち、こうしたMAGAの人々はごく一部。
リベラルな価値観を持つZ世代までもが今回トランプに投票した理由は、彼が第一次政権の実績をもとに自身を「反戦大統領」としてアピールしたから。
「私は戦争を始めない、戦争を止める(I’m not going to start a war, I’m gouing to stop wars.)」と繰り返したトランプを有権者が信じたからこそ、彼はカムバックを果たしたのです。

しかし、結果はご存知の通り。

第二次政権が昨年スタートして以降、トランプはソマリアやシリアへの空爆、ベネズエラのマドゥロ大統領の捕縛、イスラエルと共同で行ったイランへの大規模攻撃などを実施。

イラン イスラエル ヴァンス 政治批判 トランプ 反戦

特にイランへの攻撃はトランプ大統領を支える閣僚のうち、J・D・ヴァンス副大統領が

「大統領選で『新たな戦争はしない』と公約していたのにイランへ攻撃することは支持者への裏切り行為とみなされる恐れがある」

と明確に反対していたことが報じられています。

果たしてヴァンス副大統領の懸念は現実のものとなりました。
トランプをいまだに「反戦大統領」だと信じている米国民は一人もいないでしょう。

では、トランプに「失望」したアメリカの有権者は、彼に投票したことを「後悔」しているのでしょうか?

私にはトランプ “でさえも” 戦争をやり始めた、共和党だろうと民主党だろうとアメリカに反戦大統領は生まれない、ということにアメリカ国民が「絶望」しているように思えてなりません。

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しゅー
2022年まで約6年間にわたって大手IT系企業に在籍。当時はファッションブランドやゲーム会社のマーケティング・カスタマーエクスペリエンス強化・海外進出を支援。 現在は当サイトの共同運営の他、職人の手しごとを発信するECサイト「CRAFT-TALES.com」を運営。 ファッションはデザイナーズもストリートもアルチザンも大好きだが、特にSupremeが大好物。