1996年より少年ジャンプにて連載が開始された遊☆戯☆王。
1999年に原作で人気を博したゲーム「マジック&ウィザーズ」をホビー化させ「遊戯王OCG」としてコナミより発売し、以来四半世紀以上ユーザーに愛されるカードゲームとなりました。
そんな遊戯王のコンテンツですが、検索エンジンのサジェスト等に必ず現れる「遊戯王 オワコン」というキーワードがあります。
今回は現役でプレイ及びコレクションを行っている筆者が遊戯王OCGの観点での遊戯王 オワコン説について徹底的に解説します。
■遊戯王の歴史
遊戯王がオワコンかどうかを解説する前にまずは遊戯王の歴史を軽くおさらいしましょう。
遊戯王というコンテンツは冒頭に記述した通り1996年より週刊少年ジャンプにて連載を開始。
1998年に遊戯王第1作目の東映版と呼ばれるアニメの放映が開始。
1999年に遊戯王OCGがコナミより発売を開始。
そのOCGを基にしたカードゲームアニメ「遊☆戯☆王デュエルモンスターズ」が2000年より放映開始。
以来四半世紀の時を得て現在に至ります。
四半世紀もあれば様々な事件やイベントが勃発しており、本当に終わるかと思った事もあるものの、現在に至るまで遊戯王というコンテンツは続いているのが事実です。
■遊戯王は本当にオワコンなのか?
結論から申し上げると筆者は遊戯王というコンテンツはオワコンではないと思います。
ただしオワコンと言われてしまう理由もわかるのでいくつかの「オワコン要素(OCG)」について詳しく見ていきます。
・OCGのゲーム性
まずはオワコン要素として挙げられるのは「OCGのゲーム性」でしょう。
OCGというカードゲームは他のカードゲームで見られる「プレイレギュレーション」が存在しません。(ここでのレギュレーションとはスタンダード等の意味であり制限のレギュレーションではありません)
これはつまりOCGというカードゲームは四半世紀以上の歴史の中でリリースした一部を除く膨大なカードの種類の中からデッキを組めるということです。
これにはメリットとデメリットが存在しておりメリットとしては
- 好きなカードを使用できる
- 昔からいるユーザーの資産価値が上昇することがある(直近で言うところのデモンスミスのルリーといった新規カードとのシナジーで高騰すると言う事です)
- 現ユーザーの資産担保(レギュ落ち等で大会で使用できなくなるのは制限改定以外で存在しない)
等が挙げられます。
逆にデメリットとしては
- カードの種類が膨大すぎて新規ユーザーがわからない
- 新規ユーザーが始める際のデッキに入る基本的なカードが高値になりがち
- 昔のカードで必要になったカードが高くなりがち
といったところでしょうか。
ここで注目していただきたいのはメリットの部分です。
このメリットの部分は大半が現ユーザーにメリットがあると言う点で新規層に対してはデメリットの方が多いという点です。
コンテンツの存続という意味で「新規ユーザーの獲得」は何よりの至上命題だと考えていますが、その新規ユーザーに対して今のOCGのルールやレギュレーションは難しすぎるというのが本音です。
実際に今の遊戯王OCGに関しては新規ユーザーが多いとは言えない状況です。
かといってプレイレギュレーションを導入すれば良いかというとそうでもなく、実際に遊戯王は「リンクショック」という事件を起こしており既存ユーザーを切るようなルール改定を行った際には多くのユーザーが離れて行ったという事実もあります。
(リンクショックについてはまた後日記事にします)
一度慣れてしまえば特に気にはならないのですが、遊戯王はゲームに慣れるまで時間がかかります。
自由度が高すぎるのとその長い歴史から様々なカードやルールが加えられてきていますが、作っているコナミでも裁定があやふやなんて事もあるレベルで複雑です。
ゲームにそこそこ勝てるプレイヤーでも完全に遊戯王の処理を間違えない事がないかといったらそんなことは絶対に無いと断言できてしまうレベルで難しいです。
処理間違え等日常茶飯事で起こっており、プレイ時間等の制限から見逃されている事が多いと思います。
例えば直近のYCSJ大阪では決勝戦で処理ミスが行われていましたが、OCGはジャッジに対して処理間違えの申告を「プレイヤーが気づけば」行う事ができるというルールが存在しておりそのルールからミスが発覚していたにも関わらずゲームが進行してしまうという始末でした。
実況側も気づいてるのにも関わらず両プレイヤーから申告が無いという理由でそのまま進行し、勝敗を決するレベルのミスであったにも関わらず決着するまで特に指摘できずに終わっています。
(このミスに関しては両プレイヤーに非があるわけではなく、ミスをしてしまっても修正できないルールに問題があるという点で例に上げさせていただいています。両プレイヤーへの誹謗中傷は絶対に控えてください)
数千人規模の大会の決勝でもこのようなミスが発生しており、いかに遊戯王というゲームが複雑かつ初心者に優しく無いかがわかるかと思います。
チェーン処理や強制効果・任意効果等、一見するとわからないような効果が遊戯王には多く存在します。
そのルールが面白い人には面白いのですが、新規層という獲得に中々結びつかなくなっているというのが現在の遊戯王OCGが抱える問題点でしょう。
・原作アニメの不在に関して
出典:駿河屋
次のオワコン要素としては現在進行形で新しい「OCG」のアニメが存在しないという点です。
遊戯王は原作が終了してもアニメ自体は続いており、初代遊戯王デュエルモンスターズの放映後も
- GX
- 5D’s
- ZEXAL
- ARC-V
- VRAINS
と続いていました。
しかしVRAINSを最後にラッシュデュエルに変更されてしまい、現在進行形で遊戯王OCGのアニメは放映されていません。
今まではアニメで使用されたカードを実際に使用できるという「ホビー的な要素」で既存のプレイヤーは勿論、アニメを観た新規ユーザーの獲得につながっていました。
仮面ライダー等の変身ベルトのようなホビーとしての立ち位置で新規の獲得は中々難しくなってきています。
またプレイヤー目線では5D’sではシンクロ召喚、ZEXALではエクシーズ召喚、ARC-Vではペンデュラム召喚、VRAINSではリンク召喚といった既存のゲームに革命を起こす新種のルールが追加されてきました。
このような新種のルールはアニメの終了と共に訪れる契機が無くなっており、実際にVRAINS以降こういった新規ギミックが存在しません。
新規のパックが定期的にリリースされていますが、どこまで行っても現状のルールの中での新規カードで、こういった革命的なルールやギミックの追加する要素が無くなってしまいました。
現状では遊戯王のアニメはラッシュデュエルという遊戯王OCGと似たコンテンツをメインに放映していますが、OCGユーザーにとってはあまり関係の無い事なのが残念です。
誤解が無いように解説しますがラッシュデュエルにはラッシュの面白さがあります。
しかし非常に似てはいるものの遊戯王OCGとは似て非なる存在であり互換性も無いのでラッシュの新規ユーザーがOCGにとはあまりなっておらず、新規ユーザー獲得やOCGユーザーの目新しい追加要素があるアニメは存在していないのと同義となっているのは「オワコン」と呼ばれても仕方ない部分ではあると筆者は考えます。
・売上に関して
オワコンと言われる理由の一つに「売上」が関わっているのは事実でしょう。
ユーザー数は体感しづらいものの、売上に関してはユーザーは嘘をつきません。
眼に見えるカード売り場で遊戯王が完売しているかと言われるとそうでも無いですが、実際には遊戯王の市場規模はTCG業界では2023年度の売上で言うと2位です。
1位はみなさんご存知のポケモンカードゲームで遊戯王の3倍の売上を叩き出している化け物IPですが、遊戯王はその次点で3位のデュエル・マスターズとは2倍以上とはいかないものの、大差をつけて売上を上げています。
つまり眼に見える現場レベルの売上自体は少なそうに見えますし常に在庫があるのは事実ですが、実際にはオワコンと呼ばれる程の売上減少かと言われるとそうではないと言う所は留意しておく必要があると言えるでしょう。
ただし、コロナ禍以降のTCG業界の躍進はめざましく今までのように遊戯王がトップと言う時代は終わり現在はTCG群雄割拠の時代がきています。
今までの遊戯王・デュエマ・ポケカ以外にもワンピースやドラゴンボール、コナンといった新規カードタイトルが続々と出ており実際に売れているかはともかく競合が多くなってきているのは事実です。
・遊戯王の壊れカード論争
出典:カードラッシュ
オワコン論争が勃発するタイミングで多いのが「壊れカード」の出現です。
壊れカードと言うのはその名の通り、遊戯王カードの中で一際強いカードを「壊れ」といいます。
この壊れカードが出現すると環境がその壊れカードに支配されてしまい、どの対戦相手も壊れカードを使用してくるのでゲームのマンネリ化が行われます。
直近でいうところの「ライゼオル」を初めスネークアイ関連のカードやデモンスミス、その少し前だとティアラメンツが該当すると思います。
遊戯王と言うコンテンツは対人戦が故に強いカードが持て囃されるのは当たり前なのですが、あまりに強すぎるのは環境の多様性が失われてしまいます。
ただでさえ少ない新規層は勿論現ユーザーが離れていく要因になりかねません。
しかし実際には遊戯王を長く遊んでいる人ほど慣れていってしまっているもので中々引退はしなかったものですが、昨今の事情が異なってきています。
前項に述べたとおり今では面白いカードゲームが多く存在し、カードゲームユーザーのプレイカードの種類の選択肢が豊富となりました。
特にワンピースカードは長年遊戯王プレイヤーだった人の多くがプレイしており、遊戯王をやめてワンピースと言う方も最近は多く見かけます。
遊戯王は長年「壊れカード」をリリースし「制限改定」で環境をコントロールしてきましたが、2024年現在ではそのコントロールの仕方は古いと言わざるを得ません。
今までは壊れカードが制限改定にかかるまで「我慢」の一択でしたが、今では他に面白いカードゲームがわんさかあるのですから「我慢」が必要なカードゲームをする理由が全く無いのです。
制限改定を待っている間は他のカードゲームをし、気がつけばそのカードゲームにハマっているので遊戯王の改定が行われても戻って来ない人も実際に筆者の周りにはいます。
このように「壊れカード」の出現はオワコン化を加速する要素の一つであるのは間違いないと言うのが正直な所です。
・競技性と大会カードの価値
今までの遊戯王は競技性と言う意味では国内においてMTGの次点辺りの盛り上がりがあったと筆者は感じてきました。
年一回の世界大会を初め、個人主催の「CS(チャンピオンシップ)」等の多くが遊戯王と言うコンテンツで行われており、盛り上がっていました。
この競技性に関してはデータが少なく主観的な話になることを前提にさせていただきますが、現在ではその地位をポケモンやデュエル・マスターズ、ワンピースに取られてしまったと言うのが筆者の体感です。
ポケモンカードの全世界での盛り上がりは言うまでもありませんが、デュエル・マスターズに関しては早期からCSサポートやGPといった「公式」がサポートし、大型の大会を開くようになっていました。(CSで色々炎上していましたがそれはまた別の話です)
この大型大会は現在の遊戯王でいうところのYCSJに当たるわけですが、このYCSJというイベントは割と近年に開催されるようになったものであり、それまでは世界大会以外のイベントは公式で行われたものはジャンプフェスタ位しか行われていなかったように感じます。
2000、2010年代の遊戯王は一時期に比べて盛り下がってはいたものの、前述したように競合他社のカードよりも圧倒的に遊戯王のCSが多く開催されており、これらのCSでは景品(金銭)と名誉(優勝やベスト⚪︎⚪︎といった自己顕示欲)が獲得できるものでした。
これは遊戯王をプレイするメリットの一つであったのは間違いないと筆者は感じています。
これに胡座をかいたのかはわかりませんが、近年になるまで遊戯王は大型大会を積極的に開催せず、今でいう「遊戯王の日」等といった店舗レベルのイベントも極少数しか行っていませんでした。
しかし近年になり景品・名誉を獲得できるカードゲームが他に多く存在し、わざわざ遊戯王を選ぶ人が少なくなってきているように感じます。
例えばデュエル・マスターズのGPで獲得できるカードは4,50万円はするカードであるのに対して遊戯王は同規模のYCSJではベスト64に配布することから2,30万円程度となっています。(勿論入手難度に比べての入手確率は高いのでどちらが良いかは一概には言えませんが)
ワンピースカードに至っては店舗レベルのフラッグシップ大会で数万円レベルの価値が出るカードが配布される上に地区予選レベルの配布カードで数十万円のカードが2枚配布され、全国大会レベルになると100万円レベルのカードが配布されています。
価値を決めているのはあくまで我々ユーザーという点で公式がコントロールしているものではありませんが、遊戯王において同じような努力をしてもリターンが少ない競技制度となっているいうのは事実です。
遊戯王では世界大会優勝で間違いなく数百万円の価値のあるカードを入手できるわけですが、ワンピースカードやポケモンカードの世界大会入賞者カードと比べるとどうかと言われると後者の方が高いという印象が否めません。
正直なところ、カードゲームプレイヤーの私にとっては金額とかでカードを語るのは正直いいものではありませんが、間違いなくこの競技の話に関しては盛り上がりに影響する部分であると思いましたので率直な意見を述べさせていただきました。
■遊戯王がオワコンにならない為に
このように遊戯王のオワコン論争を様々な角度から観た上で筆者は「オワコンではない」と結論づけてはいますが、実際には遊戯王の盛り上がりは間違いなく下火であるというのは事実と言えるでしょう。
「新規層の開拓」が特に難しい部分で、先述した様々な理由で新規層の開拓は失敗していると言わざるを得ないと思います。
現在の遊戯王は過去の遺産で食い繋いでいるというのが正直な印象です。
25周年の2024年はそれが顕著に現れており、昔のカードを復刻したり昔のテーマを強化するという「昔からのユーザーまたは昔に遊戯王を集めていた人に対してのアプローチ」をひしひしと感じます。
これは我々のような遊戯王ジャンキーにとっては心地良いもので歓迎すべき点なのですが、「昔」を知らない新規ユーザーの獲得には至らないのでは無いでしょうか。
原作者の高橋先生も亡くなった今、新しい試みを実践するのが難しいかもしれませんがあまりにも新規ユーザーを獲得する気概が感じられません。
このまま先細り過去の栄光に縋り本当に「オワコン」とならないように、新規ユーザーを獲得するような施策を展開をした方が良いと思います。
申し訳ありませんが、今の遊戯王は新規ユーザーを獲得する施策を行っているようには思えません。
ラッシュデュエルは面白いですがOCGの新規獲得には至っておらず、新規ユーザーをラッシュで獲得というのはプロモーションの方向としては違うのではないかと実際にどちらもプレイしている身としては感じました。
また、いつものように壊れカードを出しては制限改定で縛るのはいい加減意図してやっているならやらない方が良いと感じます。
意図してやっていないのであればテストプレイが不十分かデザイナーを解雇するべきです。
反面、遊戯王というコンテンツ自体は素晴らしく、2月に開催された東京ドームイベントやYCSJ TOKYOに参加しましたが、ユーザーの年齢層は高いもののまだまだ人気なんだなぁと感じるイベントで遊戯王の底力を感じるイベントだったと感じています。
このままオワコンとなるのか、それとも盛り返すのか。
今後のコナミの展開に期待したいと考えています。
■さいごに
ここまで遊戯王OCGがオワコンなのかどうかを解説してきました。
拙い文章ですがお読みくださりありがとうございました。
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